米IBMがUNIXサーバーの最上位「p690」を発表，「ターゲットは米サンのFire 15K」

横田英史

2001.10.05

IBMのUNIXサーバー米IBMが米国時間10月4日に，UNIXサーバーの最上位機となる「p690」を発表した。「p690は世界で最速。SPECjbb2000などのベンチマークから，p690はSun社のFire 15Kよりも約2倍高速であることが証明された。つまり，コストはSun社の半分」（IBM社）。

　p690は開発コード名「Regatta」と呼ばれていたもの。開発には5年を費やしたという。

　CPUはPOEWR4プロセサ。動作周波数は1.1GHzと1.3GHz。POWER4プロセサを搭載するシステムはこれが初めて。POWER4は，SOI（silicon-on-insulator：シリコン/絶縁膜構造）と銅（Cu）配線技術をベースに，ニつのマイクロプロセサとシステム・スイッチ，キャッシュをオンチップに集積し，消費電力を大幅に低減した。また，8プロセサのマルチチップ・モジュール（MCM)を「手のひらサイズ」に小型化した。

　IBM社が発表したPOWER4プロセサとSun社のUltraSPARCIIIプロセサのベンチマークの比較は以下の通り。

	POWER4	UltraSPARCIII
ビジネス処理性能（SPECint2000）	808	467
科学技術計算性能（SPECfp2000）	1169	482
Java処理性能（SPECJBB2000）	169,000 （16プロセサ）	109,146 （24プロセサ）

出典： IBM社

　p690は最大32プロセサ，主記憶は最大256Gバイト，ハード・ディスク容量は最大4.5Tバイトの構成が採れる。PCIスロットは160個。OSはAIX 5L。64ビット版Linuxにも対応する。システムの障害発生時にもオペレーションを継続するSelf-Healingアーキテクチャなどを組み込んだ。

　スタンダード・モデルの構成は，1.1GHz動作のPOWER4 MCMを8個搭載，主記憶8Gバイト，ハード・ディスク（HDD）容量は36.4Gバイト。価格は45万ドルから。

　高性能タイプのモデルは，1.3GHz動作のPOWER4 HPCを16個搭載，主記憶32Gバイト，容量36.4Gバイト。価格は100万6154ドルから。32プロセサ構成で，主記憶128Gバイト，HDD容量36.4Gバイトのモデルは203万7674ドルから。IBM社は仕様や性能の詳細をWWWサイトで公開している。いずれも，2001年12月に出荷を始める予定。

　なお，必要に応じてシステムを拡張できるオンデマンド・サービス「Capacity Upgrade on Demand（CUoD）」の提供も行う。サービスの提供開始は2002年を予定している。CUoDは，ユーザーが希望する仕様よりも多くのCPUを搭載したサーバーを提供するもの。未使用のCPUについては，トラフィックの増加などによって，より高い処理能力が必要になった場合に稼働させ，その時点ではじめて課金する。

　「複数のp690を接続することで，スーパーコンピュータ並みの性能が得られる」（IBM社）。すでに，米Raytheon，蘭Ahold，Telia Net，東京都立大学，米Oak Ridge National Laboratory，独Max Planck Societyなどがp690の導入を決めているという。

　米International Data Corporation（IDC）によれば，2000年におけるUNIXサーバー市場（売上高ベース）は，Sun社が前年比4ポイント増のシェア47％を獲得し，圧倒的首位に立っている。2位のIBM社は同6ポイント減の19％へと縮小，両社の差が開いている。3位は米Hewlett-Packard（HP）で，同5ポイント増の12％。なお，2000年のUNIXサーバー市場は329億ドル。2001年，2002年はやや落ち込むとIDCは予測している。

　なお，IBM社はPOWER4プロセサを搭載したメインフレーム「iSeries」を2002年半ばにリリースする計画である。