米Sun Microsystemsなど33の企業・団体が集まり,インターネットにおけるユーザー認証に関するオープンな技術の開発/普及を目指す標準化団体「Liberty Alliance Project」を設立した。設立企業が米国時間9月26日に発表したもの。米Microsoftの「Passport」を強く意識した標準化団体である。

 Liberty Alliance Projectは,インターネットで取引などを行う際に必要となるユビキタス(いつでも,どこでも)なシングル・サインオン認証を実現できるような標準仕様の策定を目的としている。

 設立組織には,サービス・プロバイダや,自動車メーカー,金融サービス,旅行業,デジタル・メディア,小売業,電気通信,技術関連業界などから,大手企業が名を連ねている。

 Liberty Alliance Projectの主な目的は次の三つである。

1)個人消費者や企業ユーザーが,自分自身で個人情報を安全に保管できるようにする。これにより,情報の一極集中をなくし,相互運用や複数のネットワークにまたがるサービスの提供を推進する。

2)「シングル・サインオン」を実現するオープンな標準を策定する。これにより,ユーザーはどこか1カ所のWWWサイトで認証を受けると,他のWWWサイトで認証を受けずにサービスを利用することができる。

3)インターネット接続を行うすべての機器で利用できるネットワーク認証に関するオープンな標準を策定する。これにより,携帯電話,車載機器,クレジットカードなど,さまざまな機器の間で安全な認証を行えるようになる。

 主な設立メンバーにはSun社のほか以下の企業/団体がある。

 ActivCard社,米American Airlines,Apache Software Foundation,米Bank of America,カナダBell Canada Enterprises,米Cingular Wireless,米Cisco Systems,米CollabNet,米Dun and Bradstreet,米eBay,米Entrust,Fidelity Investments社,フランスGemplus,米General Motors,バミューダ諸島Global Crossing,米i2 Technologies,米Intuit,米Liberate Technologies,フィンランドNokia,NTTドコモ,米O'Reilly and Associates,米Openwave Systems,米RealNetworks,米RSA Security,米Sabre,米Schlumberger,ソニー,米Sprint,米Travelocity,米United Airlines,米VeriSign,英Vodafone。

 なお設立メンバーは,組織や知的財産の共同開発などに関する取り決めを行い,今後60日以内に協定を完成させる予定である。

 ちなみに米Microsoftは米国時間9月20日に,インターネットのユーザー認証サービスに関し,独自の認証機能を提供するという従来の方針を転換したことを正式に発表している。具体的には,Passportサービスのセキュリティ・プロトコルに,オープン技術の「Kerberos」を用いることで,他のサービスが提供している認証機能との相互運用性の確保を図るという。

 なおインターネット版ウォールストリート・ジャーナルによると,Liberty Alliance ProjectおよびMicrosoft社の双方とも,「話し合う用意はある」としている。

 Passportのプライバシ機能については,これまでにも複数のプライバシ保護団体などから,「Microsoft社が不正にユーザーの個人情報を収集する恐れがある」との声があがっていた。プライバシ保護団体のElectronic Privacy Information CenterやPrivacy Foundationなどが,連邦取引委員会 (FTC:Federal Trade Commission)に対し,調査および「Windows XP」の発売延期を要請している。

 調査会社の米Gartnerによれば,「Passportの未登録ユーザーのうち,7割は『今後も利用しない』と考えている」という。「消費者はプライバシやセキュリティの問題を最大の懸念事項として挙げており,プライバシを犠牲にしてまでもPassportのようなインターネットの先端技術を利用したいとは考えていない」(Gartner社)。

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[発表資料(Liberty Alliance Project)]
[発表資料(Sun社)]
[発表資料(Nokia社)]