米Gartnerが米国時間8月23日に,「米Microsoftは『Microsoft Passport』のPRに躍起だが,ネット・ユーザーの方は,ほとんど興味を持っていない。『Passportを使うことで利便性が向上すると思う』と期待する人の割合はわずか11%にとどまっている」とする調査結果を発表した。

 Passportは,電子商取引などに向けたユーザーの認証サービス。ユーザーIDとパスワードを使って認証を行う。個人データをあらかじめ記録することにより,ユーザーがWWWサイトで必要事項を再入力する手間がなくなる。Microsoft社は,このPassportを「Windows XP」や現在開発中のWWWサービス向けプラットフォーム「Hailstorm」に組み込んで提供する。オンライン・ショッピングのほか,スケジュール帳管理などでのカスタマイズ・サービスに向ける。

 Passportの登録ユーザーは現在約800万人。登録した主な理由としては,「Hotmailなどのサービスを利用するためのユーザー登録で,Passportへのサインアップが必須となっていたため」を挙げた人が最も多かった。

 また,Gartner社が米国の消費者を対象にPassportに関する調査を実施したところ,Passportをまだ利用していない人の70%以上が「今後6カ月以内に,Passportを利用することはないと思う」と回答した。

 「消費者はプライバシやセキュリティの問題を最大の懸念事項として挙げており,プライバシを犠牲にしてまでもPassportのようなインターネットの先端技術を利用したいとは考えていない」(Gartner社副社長のAvivah Litan氏)。

 Litan氏は,Passportが利用できるWWWサイトがPassport対応ページのみに限定されていることも,ユーザーが無関心であることの原因であるとしている。

 さらに,Microsoft社を含め,インターネットのサービス・プロバイダに対する消費者の信頼度が概して低いという点もある。ネット・ユーザーの約1/3が,「Microsoft社による個人情報/クレジットカード情報などの取り扱いは,セキュリティや安全性の点で十分なレベルとはいえないだろう」,また「Microsoft社は入手した個人情報を本人の同意を得ないまま第3者に転売/譲渡してしまうのでは」と考えているという。「Microsoft社は個人情報をきちんと安全に管理すると思う」とした人はわずか15%にとどまった。

 また,様々なHailstormのカスタマイズWWWサービスについても関心が低かった。個人データが共有可能なカスタマイズ・サービスについては,「興味なし」とする人が90%にのぼった。

 「Microsoft社は,MSNサービスや電子メール・サービス,インスタント・メッセージング・サービスを大きく拡大しており,それと同時にPassportサービスのユーザー数なども押し上げている。また,総合的な信頼性の面では,ライバルの米America Online(AOL)を大きく上回っているとの調査結果も明らかになっている(関連記事)。今後Hailstormなど新製品を続々と投入するにあたり,状況としては好位置につけているといえる」(Gartner社)

 とはいえ,Microsoft社がPassportサービスを拡大するためには,まず電子商取引事業者がWWWサイトにPassportへの対応機能を組み込む必要があり,Gartner社は「普及には時間がかかるだろう」とみている。

 なお,Passportに関しては,プライバシ擁護団体が2001年7月に,「個人情報収集機能がプライバシを侵害する恐れがある」と指摘,米連邦取引委員会(FTC)にWindows XPの発売延期を要請している(関連記事)。これに対し,Microsoft社は「ユーザーの利便性向上のため」と主張している。

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