米Forrester Researchは米国時間7月30日に,預金口座や年金,電子メールなど,オンラインで個人の財務情報を一括管理する「アカウント・アグリゲーション」に関する調査結果を発表した。多くの金融企業は,アカウント・アグリゲーションを利用して,顧客の増加と維持が可能だと考えている。しかし限られた利用者数,高い導入コスト,企業のデータ収集能力の欠如などが原因で,ROI(投資回収率)は低いと分析する。

 顧客を失う恐れと競争に負けまいとする焦りから,アカウント・アグリゲーションを導入する企業が増えている。しかしインターネットに接続している米国世帯で,アカウント・アグリゲーションに関心がある世帯はわずか7%に過ぎない。多くのユーザーは,サービスの必要性を感じておらず,オンラインのアカウント名とパスワードを,プロバイダに通知せねばならないことに強い抵抗を感じている。

 企業は顧客の減少を懸念しているが,その心配は見当はずれだ。他企業のサービスに乗り換える顧客は極めて少ない。実際に取引企業の変更を検討する顧客は,生命保険契約者の場合3%,証券口座を持つ顧客の場合2%である。

 Forrester社によると,最初の3年に収益を確保できる企業はごくわずかである。現在,企業側で発生するコストはユーザー1人当たり70ドル以上で,3年経過した時点で約36ドルになる。企業が投資を回収するには,最初の3年でアカウント・アグリゲーションを利用する各ユーザーに,少なくともさらに二つ以上の商品を販売しなくてはならない。ところが今回調査したアカウント・アグリゲーションを提供している企業のうち,収集した顧客データを分析して競合他社の顧客にアプローチした企業は1社もなかった。

 「適切な顧客ベース,市場性の高い商品と技術力をもち,オープン型ファイナンスを志向する企業でないと投資を回収できない。成功するには,収集データを活用して,顧客の財務ニーズに応えた商品を提供する必要がある」(Forrester社上級アナリストのCatherine Graeber氏)。

 調査対象となった金融企業45社のうち,1/3以上が既にアカウント・アグリゲーション・サービスを提供している。また2003年末までにサービス提供を予定している企業は38%である。顧客維持によって,投資回収が可能だと考える企業は51%だった。

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