(2001.7.26,Mary Mosquera=InternetWeek

 プライバシ擁護団体が米国時間7月26日に,連邦取引委員会 (FTC:Federal Trade Commission)に対し米Microsoftの「Windows XP」について調査を行い,発売を延期するよう要請する。Microsoft社が不正にユーザーの個人情報を収集する恐れがあるというもの。

 FTCに要請を行う団体は,Electronic Privacy Information Center,Junkbusters社,Privacy Foundationなど。これら団体は,Microsoft社が不正競争防止法(Fair Trade Law)に違反してユーザーの情報を取得し,インターネット利用を追跡しているとしてFTCに苦情を申し立てる。

 Microsoft社は音楽,バンキング,インスタント・メッセンジャなどのインターネット・サービスをWindows XPに組み込み,10月25日に発売する予定である。同社の.NET戦略に基づき,XML対応のWebサービス群「HailStorm」,認証サービス「Passport」,電子サイフサービス「Wallet」をWindows XPに取り入れている。

 プライバシ擁護団体は,これらサービスのポータル・サイトである「Passport」の個人情報収集サービスがプライバシを侵害する恐れがあると指摘している。

 Passportのシステムでは,パスワードなどの個人データを記録することにより,ユーザーがWWWサイトで情報を再入力する手間がなくなる。Microsoft社はPassportシステムを「ユーザーの利便性のために設計した」と説明している。

 Electronic Privacy Information Center上級ディレクタのMarc Rotenberg氏は,「Microsoft社は製品と手続きを修正しなければならないだろう」と述べている。Passport登録,Windows XPの使用開始手続き,電子メール・サービス「Hotmail」,「Microsoft Kids Passport」登録をはじめ,Microsoft社ネットワークと関連WWWサイトにおけるPassport情報共有などがその対象である。

 FTCへの申請は,司法省が起こしている独占禁止法違反訴訟とは無関係に行われる。しかし,「Microsoft社のOS市場における独占的地位が,自発的には明かさないだろう個人情報の提供を消費者に強制している」とJunkbusters社社長のJason Catlett氏は指摘する。

 「消費者には選択の余地がほとんどなく,サービスを受けるためには情報を渡さなければならない。サービスの提供に必要なこととは思えない」(Catlett氏)。

 Rotenberg氏は,司法省と司法長官に苦情申し立ての件を通知するとしている。「Windows XPが普及する前に,プライバシの問題についてもっと配慮すべきである」(Rotenberg氏)。

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