米InterTrustが米国時間7月19日に,米Microsoftとの特許係争を拡大したことを明らかにした。「暗号化コンテンツの取り扱い技術」「デジタル・コンテンツ転送時の著作権保護技術」の2件の特許に関してMicrosoft社を提訴していたが,デジタル情報の管理技術に関する特許を追加する申し立てを行った。Microsoft社の電子ブック「Microsoft eBook」が新たな対象となる。

 InterTrust社がMicrosoft社を提訴したのは2001年4月。Microsoft社のWindows Media PlayerなどがInterTrust社の保有する特許を侵害しているとして,カリフォルニア州北地区連邦地裁に提訴した。さらに6月26日には,申請を行っていたデジタル・コンテンツ転送時の著作権保護技術に関する米国特許が成立したため,同社はただちにこれを訴訟対象に加えた

 今回デジタル情報管理技術に関する特許を追加したことで,対象となる特許は合計3件となった。同特許は,デジタル情報を管理する基本技術に関するもので,データの構造やルール,メタデータについて定め,デジタル・コンテンツの編集やパッケージング,管理するために用いる技術である。特許番号は5,920,861。1997年2月に申請し,1999年7月6日に成立した。

 InterTrust社はこのデジタル情報管理技術に関する特許を侵害しているMicrosoft社の製品として,「Microsoft eBook」関連製品である「Microsoft Reader」や「Digital Asset Server」を挙げている。Microsoft Readerは電子ブックをパソコンで読むためのソフトウエア。Digital Asset Serverは,デジタル著作権管理(DRM)をベースにした電子ブック配信システムである。

 InterTrust社はMicrosoft社に対し,Microsoft社のデジタル著作権管理(DRM)技術を含む全ての製品の販売差し止めと損害賠償の支払いを求めている。InterTrust社はこれに含まれる製品として,「Windows Media Player」をはじめ,Windowsなども挙げている。InterTrust社が指摘するWindowsには現行製品のほか,開発中の「Windows XP」も含む。

 なお,Microsoft社はこの訴訟に関し,声明を一切発表していない。

 DRM市場については,調査会社の米International Data Corporation(IDC)が6月28日(米国時間)に,「世界のDRM技術市場は2000年の9600万ドルの水準から年平均106%で成長し,2005年には35億ドルを超える規模へと飛躍的に拡大する」との予測を発表している。また,米Meta Groupも「DRM技術市場は売上高ベースで2004年に3000億ドル規模に達する」との調査結果を発表している。

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[InterTrust社の申し立て資料:6/26付]