米CIO Magazine誌を発行する米CIO.comが米国時間7月2日に,「企業/政府のIT投資は7カ月ぶりに上昇に転じた」とする調査結果を発表した。

 CIO.com社は2000年8月より毎月IT投資や予算の調査を行っており,過去12カ月間の投資実績を表す「TGIC(Technology Growth Indeices for the Current 12-months),向こう12カ月間の予算を表す「TGIF(Technology Growth Indeices for the Future 12-months)」などの数値をまとめている。5月の調査ではTGIC,TGIFともに0.6だったが6月は,TGICが0.7,TGIFが1.0へと上昇へ転じた。もっとも,2000年9月の時点では「3.3」と「4.2」だったので,この水準と比べると大幅に低下している。

 今後12カ月間におけるIT予算の金額について,過去12カ月間との比較値は,5月の「5%増」から6月は「6%増」へとわずかに増えた。2000年11月時点での回答は「22%増」だった。

 予算配分をカテゴリ別にみると,「データ・ストレージ」が5月の49%増から6月度は「51%」へと増えている。その他のカテゴリではいずれも伸び率が下がった。

 人件費の予算額も,5月の6%増から6月は「7%増」と上昇した。

 電子商取引に関する今後12カ月間の予算は「16%増」で,過去12カ月間の14%増と比べ上昇している。2000年の夏時点では「25%増」だった。「今後12カ月における電子商取引向けソフトウエアの予算を増額する計画である」と回答した企業は全体の42%を占めた。

 今後12カ月間に,企業の総売上高のうち電子商取引が占める割合の見通しは「11%」だった。過去12カ月間の実績は8%。なお,2000年8月時点では24%増を見込んでいた。

 IT予算のうちインターネット関連のアプリケーションの購入に充てる費用の割合は16%。2000年8月時点では33%近くだったので,ここ1年間で大幅に低下している。「CIOのインターネットに対する熱が冷めてきている」(CIO.com社)。

 新規雇用に関しては,過去12カ月間でインターネット経由が全体の13%だった。今後12カ月間で17%程度に引き上げるという。

 「現在の経済減速がIT投資予算に影響を与えるか。どの程度影響するか」については,42.4%が「影響しない」と回答した。「やや減」が41.7%。「大幅減」が11.1%。一方で「増額」も2.6%あった。

 IT予算のマイナス要因としては,「収益の鈍化」(39.0%)をはじめ,「予算が厳しい」(25.5%),「ITのインフラなどがすでに十分なレベルに達している」(23.6%)などが挙がった。

 第1四半期と第2四半期の比較(季節調整済み)では,「変化なし」が49.4%,「増額」が23.2%,「減額」が17.3%,「大幅減額」が6.3%,「大幅増額」が3.0%という結果だった。

 なお調査はDeutsche Banc Alex BrownのChief Investment Strategistを務めるEd Yardeni氏が行ったもの。製造,金融,サービスなど広範にわたる業種の企業,および連邦,州,郡などの政府機関を対象に,6月14日から21日にわたり電子メールにて実施した。企業/政府機関のCIO(1100人)とCIO職に準ずる職責にある『CIO』誌の読者3000人に対し,データ・ネットワーキング,通信機器,インターネットの利用状況や新規導入,人件費などに関する質問を行い,回答を得た。

 有効回答数は276人で,このうち96.4%が北米だった。職責別でみると,91.7%がCIO職にあり,「CEO,COO,社長」職が4.7%,「その他」が3.6%だった。企業の規模は,従業員1001人以上の大企業が39.9%,101人から1000人の中企業が43.8%,1人から100人の小企業が16.3%だった。

 「“ハイテク不況”の底は打ったようだ。しかし一方で,回復が期待通りのペースでは進まない可能性も出てきている」(Yardeni氏)。Yardeni氏はYardeni.com社のWWWサイトで調査結果の詳細を公開している。

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