米Lucent Technologiesは米国時間6月28日に,研究開発部門ベル研究所(Bell Labs)の研究チームが,光ファイバの撚り線1本で1秒間に最大100Tビットのデータが伝送できることを発見したことを明らかにし,詳細を英国の科学雑誌「Nature」の6月28日号に発表した。

 現在商業利用されている光システムのデータ転送能力は最大2Tビット/秒以下。研究レベルでは10Tビット/秒が確認されているが,一般的に利用されている通信ネットワークを使って理論上100Tビット/秒が可能になるという。

 ガラスの物理特性によって光ファイバの中で伝送される光はスクランブルの影響を受けやすくなる。このため伝送されるデータ量を計測することは理論的に難しい。例えば光ファイバの中で伝送される光信号の速度は光の強さによって異なり,自由空間中のように一定なものにはならない。物理ではこのようなふるまいを「ノンリニア」と呼んでいる。このノンリニア効果が信号の一部をノイズ化してしまう。この結果データ量を計測するのが難しくなる。

 ベル研の研究チームは,量子物理学の類推法や情報理論の考え方を使ってこれを簡素化したという。研究チームは波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)を使った通信システムで研究を行い,トランスミッタからレシーバ間でどれだけのデータ量が伝送可能かを推定した。信号が弱すぎる場合はシステムのノイズに消されてしまい,また信号が強すぎる場合は他の信号との間で干渉が起こることを発見した。ノイズや干渉がない場合に100Tビット/秒が可能になるという。

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