第3世代の携帯電話に「お熱」の米Intelだが,今度は三菱電機と提携関係に入った。第3世代携帯電話向けチップセットを共同で開発する。5月17日に都内で記者会見を開き明らかにしたもの。

 開発するのは,Intel社の組み込み向けRISCプロセサ「StrongARM」とDSP,フラッシュ・メモリを組み合わせたチップセット。チップセットにはベースバンド・プロセサなどが含まれる。DSPには,99年10月に16億ドルで買収したDSP Communications(DSPC)のコアを使う。チップセットを構成するLSIの個数については明らかにしなかった。

 このところIntel社はStrongARMを前面に押し立てて携帯電話の市場を切り開こうとしている(詳しくは「インテルとジャストが携帯機器で提携,ATOKをStrongARMにポーティング」「Intel,MPEG-4ソフトで米社と提携,StrongARM搭載の3G携帯電話でビデオ再生」)。三菱電機との今回の提携も,その延長線上に位置づけられる。

最初の製品は2002年に登場へ

 両社はすでにチップセットの開発作業に入っている。最初の製品の投入は2002年になるという。「2001年春から始まる第3世代携帯電話の第1世代には間に合わない。第3世代以降は,StrongARMのアーキテクチャをベースにソフトウエアを開発することになる」(三菱電機 常務取締役で通信システム事業本部長の中西道雄氏)。開発した製品は日本だけではなく,欧州など他の地域にも投入する。「北米方式のcdma2000に関しては,現時点では何も決まっていない」(中西氏)とする。三菱電機以外の携帯電話メーカにもチップセットを供給する。

 「1999年秋から話し合いに入っていた。三菱電機が携帯電話(無線)に関するノウハウをIntel社に提供する。逆に三菱電機は,Intel社のマイクロプロセサやDSPの技術を利用できる。三菱電機にとって,部品を安定的に調達できるメリットも大きい」(中西氏)。

 携帯電話向けフラッシュ・メモリは現在,需要の60%しか賄えないと言われるほど逼迫した状況にある。実際,携帯電話メーカはフラッシュ・メモリをはじめとする部品の確保に躍起だ。たとえばスウェーデンのEricssonはIntel社と,フランスのAlcatelが米Advanced Micro Devices(AMD)とそれぞれ複数年の契約を結んでいる。いずれも数億ドルを超える規模の提携である。この点に関しては,「今回の提携のなかには,Intel社からフラッシュ・メモリを安定供給してもらうという条項は入っていない。提携の対象は,あくまでチップセットの供給が始まる2002年からということになる。Intel社と手を組んだ背景として,部品調達が大きなファクタになっているのは事実だ」(中西氏)。

 三菱電機は,2000年に2500万台,2003年に6000万台の携帯電話を世界市場に投入する計画を立てている。2003年時点で半導体部品の50%をIntel社から調達したいとしている。ちなみに2000年の2500万台のうち,欧州で1300万台,日本で700万台,北米で300万~400万台,中国で50万台出荷するという。