ASP(application service provider)の業界団体ASPIC(ASP Industry Consortium)と国連の世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)が米国時間5月18日に,ASP事業に関する紛争回避・解決の指針を一般に公開した。

 包括的な内容で,ASP事業者が事業展開する際に必要となる各種手続きのレコメンデーション(推奨)とガイドライン(指針)から成る。紛争回避・解決の方策や手続きを示すことで信頼感を高め,ASP業界の発展を図るのが目的である。

 このガイドラインはWIPOのArbitration and Mediation Centerが採用する。Arbitration and Mediation Centerは,知的財産などインターネット/IT関連の国際紛争仲裁にあたっている。

 ガイドラインでは,問題認識,カスタマ・ヘルプデスク,サービス・レベル契約(Service Level Agreements:SLAs)といった分野に関する手続きの基準を規定する。とりわけネットワークやホスティング,アプリケーションといったサービスの提供時における契約事項に焦点をあてている。このほか典型的なASP契約における紛争解決条項の作成方法や,保険の管理/保護に関するアドバイスも盛り込んでいる。

 このガイドラインは,ASPICとWIPOが過去1年かけて取り組んできたものである。最大の目的は問題が大きくなる前にASPが問題に取り組めるようすること,すなわち紛争の拡大を防ぐことにあるという。

 「このガイドラインは切実に求められていたもの。ASPの紛争にあたる弁護士や裁判官,仲裁人などはASP業界について詳しくないかもしれない。これには紛争解決の手法を幅広く示しており,訴訟や訴訟回避の方法,ASP業界で一般的に用いられる紛争回避手法のメリットとデメリットなども示している」(ASPIC会長のTraver Gruen-Kennedy氏とWIPOアシスタントディレクター兼WIPO Arbitration and Mediation CenterアシスタントディレクターのFrancis Gurry氏)。

 ガイドラインは,両団体のWWWサイト(http://www.allaboutasp.orghttp://www.wipo.int)で公開している。

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