(2001.5.11,Mary Mosquera=InternetWeek

 米AT&T Labsが,ライブ会場などの臨場感を精密に再現できる録音技術を開発したと米国時間5月11日に発表した。

 AT&T Labs社では,この技術を「次世代のライブ録音/再生の標準となる技術」(同社)と位置づける。広帯域通信におけるストリーミング配信,インターネットでのダウンロード配信,DVDメディアでの再生といった利用法を想定する。

 AT&T Labs社によると,この技術は,コンサート・ホールなどで人間が知覚できる直接/反射音波のほぼすべてをとらえることができるという。この技術の中核となるのは,特別に設計された七つのマイクで構成するマイクロフォン・アレイ。これが人間が聴覚が知覚できる大半の音を拾う。マイクが拾った音は処理を施し,最終的な再生に向けて5チャンネルにミックスダウンする。

 「完璧な臨場感を味わいたいと考えるすべての人にとって理想的な技術。それが,音楽演奏でも滝の音でも,フットボール会場の音でもあってもかまわない。広帯域通信が今後さらに普及するにつれ,これは放送事業者やオーディオ/ゲーム・メーカにとって不可欠な技術となる」(AT&T Labs社音声映像処理研究部門バイス・プレジデントのRich Cox氏)。

 この技術はAT&T Labs社の技術指導者で,音響心理学者であるJames Johnston氏が開発した。同氏はオーディー・コーディング技術「MPEG-2 Audio-AAC」の共同開発者としても知られる人物である。

 なおこの技術は,他の5チャンネル録音技術とは異なり,人間の頭の周辺を通過する音の経路を考慮し,音が耳に到達する時間の遅れを再現する。この結果,より高い臨場感が得られるという。またライブ会場などでは録音機材を数分で設置できるため録音作業も大変容易になる。

 ユーザーがこの技術の臨場感を体感するためには,Dolby DigitalやDVD-Aといった,完全独立型の5チャンネル・サウンド方式に対応した音響システムが必要となる。家庭用パソコンでも再生可能で,この場合は5チャンネル対応のサウンド・カードを装着する必要がある。

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