米下院で通称「Tauzin-Dingell法案(H.R.1542)」が通過したことに対し,ISPの業界団体Commercial Internet eXchange Association(CIX)とU.S. Internet Service Providers Alliance(USISPA)が,米国時間5月10日に遺憾の声明を発表した。

 5月9日に可決されたTAUZIN-DINGELL法案は,エネルギーおよび商業対策委員会(House Energy and Commerce Committee:HECC)の委員長,Billy Tauzin氏と同委員John Dingell氏の名前を取ったもの。ベル系地域電話会社(RBOC)がインターネット・ベースの長距離通信サービスに進出できるようにする,という内容が含まれている。米国では1996年の新通信法以来,RBOCが事業範囲を広げるための条件として,独占状態が続くローカル・ネットワークの開放を進めようとしてきたが,その圧力を下げる方向に働く可能性がある。
 両団体による声明の概要は以下の通り。

●CIX,President,Barbara A. Dooley氏の声明
「Tauzin-Dingell法案の通過ははなはだ遺憾だ。1996年の新通信法(Telecommunication Act)制定など,競争促進を目指した政策にことごとく反するものである。Bell系電話会社の独占が続き,議会の委員たちは通信法制定時の状況や以来5年間に市場はどうなったのかなど,すっかり忘れてしまったようだ」。

「通信法制定後,多くのインターネット企業が生まれ,サービスを展開したが,地域電話会社は電話回線を開放せず,競合企業の参入を阻んだ。そのため,ISPなど多くの企業が次々と姿を消していった。ライバルを消したところで,Bell系電話会社は値上げやサービスのカットに走り,サービスの提供にかかる時間も伸びている。“独占”と呼ばれる企業の典型だ」。

●USISPAメンバーで,米Wyoming.com社長,Wyoming ISP Coalition会長のSteve Mossbrook氏の声明
「Tauzin-Dingell法案の通過はまことに遺憾である。この法案は広帯域サービスの向上をなんらもたらすわけではなく,競争が促され,消費者の選択が広がるということにもならない。全てのアメリカ国民がインターネットの恩恵を享受できるよう,支援するというものでもない。独占問題を解決する処方箋として機能するような要素も全くみられない」。

「問題は非常に単純だ。あなたは,安価でオープンなインターネット・サービスが利用したいか,いらないか。IT経済を成長させたいか,そうでないのか。良質のサービスを適正な価格で提供を受けたいか。あらゆる地域でインターネットを利用したいか,それとも独占企業にとって大きな利益を上げられる地域でだけ利用できればよいか。そういうことだ」。

「これまでにも多くのキャリアがBell系電話会社に挑むべくDSLサービス事業に参入してきたが,“非現実的”としかいいようのない条件下で,すべての企業が事業に行き詰まった」。

「こうした競争の“芽”は大都市で起こったことで,地方都市ではほとんどみられない。Bell社は利益が見込めないことから,地方の小都市ではまったくサービスを提供していない。米国のすべての地域に広帯域サービスを普及させるためには,ISPに電話回線が“現実的”な条件のもとで開放されなければならない」。

「Tauzin-Dingell法案は,Bell社の独占を助長しようとする試みにほかならない。この通り“改革”されることになれば,我々の事業は沈没を免れない」。

◎関連記事
【TechWeb特約】AT&TのCEOアームストロング氏が政府の政策担当者に3つの改革案を要求

[CIXの発表資料]
[USISPAの発表資料]