米Gartner Incが米国時間5月1日に,インスタント・メッセージ(IM)市場に関する調査結果を発表した。

 米America Online(AOL)のIMサービスが個人ユーザー市場で52%,企業ユーザー市場で51%を占めて引き続きリードしている。対抗する米Microsoft社のシェアはそれぞれ36%と40%。ただし,個人ユーザーの多くが両方のIMサービスを利用している。

 「これまでのところ,ブランドとして早く認知された方が優位という先行者利益が明らかとなっている」とGartner社は指摘する。「PalmやBlackberryなどの携帯情報端末を使うビジネスマンのあいだでは,『AOLアカウント,お持ちですか?』が決まり文句だ」(Gartner社Internet and Web Services Research部門担当副社長のDavid Smith氏)。

 Gartner社によれば,IM市場は企業,個人を合わせ現在2300万人を超える規模となっている。2004年には世界のIMユーザー数が1億8000万人規模に拡大する,今後もシェアを巡る両社のIM戦争が益々激しくなるという。

 また,音声およびテキストのオンライン・リアルタイム・コミュニケーションの60%がIM技術により提供されるようになるという。

 「IM技術は,mコマースやリアルタイムの協業システム,オンライン・ゲーム,インターネット・アプリケーションなどの中核技術として,電子メールよりも強力なコミュニケーション・ツールに発展する。特にWebサービスとの連携という点で大きな価値を持つ」(Gartner社)。

 2006年までに大企業および中企業の50%がWebサービスを積極的に利用するとGartner社は予測する。

 米Microsoftは,.NET戦略の中核として開発中のWebサービス向けプラットフォーム「HailStorm」(開発コード名)にIMを組み込むことをすでに明らかにしている。機能も拡張し,IMをIDツールとすることで,株式売買やオンライン・ショッピング,企業の購買/調達などの電子商取引にもリアルタイムで対応可能となる。Microsoft社はこうした取り組みにより,IM市場で先行する米America Online(AOL)への追い上げを図る。

 「Microsoft社は技術力で一歩上を行き,一方のAOL社はマーケティング力で勝る。Webサービスに限っていえば,この2社のIM戦争は2003年までに勝負がつく。敗者側は消える可能性もある」(Gartner社)。

 今後の展開では,先行優位の図式が当てはまらないという。「たとえて言うなら,米Fordと米Chryslerのどちらが先に組立ラインを開発するかというのと同じ。現在はAOL社がマーケティング力で先行しているが,追い上げを図るMicrosoft社は技術力に加え,Webサービスのビジョンで勝っている」(Smith氏)。

 Gartner社はMicrosoft社の課題として,「信頼性」に対するユーザーの評価が十分でないことを挙げる。特に,Webサービスやトランザクションの大半をMicrosoft社を介して行うことに対し,及び腰となる人が多いとみる。

 「IMサービスを使ってみようという人は,サービスの選択にあたって,銀行口座情報,社会保障番号,各種トランザクション情報など様々なプライベート情報が“誰”に管理/保護されるのかをまず考えるだろう。これまでのところ,プライバシ保護やセキュリティなど信頼性の面で,AOL社がMicrosoft社に勝っていることは明らか」(Gartner社アナリストのNeil MacDonald氏)。

 Gartner社は,Microsoft社は信頼性,セキュリティ,可用性の点で強化が必要であると指摘する。

一方で,AOL社は現在の優位を持続するために,機能の向上・強化に注力すべき,としている。「AOL社が自社のWebサービスの機能を向上・強化すれば,現在抱えるユーザーを確実につなぎとめられる。そうなれば,AOL社のIMサービスがデファクト・スタンダードとなる可能性が高い」(Gartner社)。

 Gartner社は具体的な展開として,「米Sun MicroSystemsとの連携による機能拡張が最も濃厚」としている。

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