米IBMが米国時間4月23日に,AIX OSの最新版となる「AIX 5L」について,機能の詳細などを明らかにした。「AIX 5L」はLinuxとの互換性を高めており,LinuxアプリケーションがそのままAIX上で動く。
IBM社のPOWERプロセサおよび米IntelのItaniumプロセサで動作する。UNIXおよびLinuxのアプリケーション構築や管理に向けた環境を提供する。Linuxアプリケーションは,簡単なリコンパイルだけでAIXで動かせるという。
AIX 5Lは,自動管理ツール,32ビット・アプリケーションと64ビット・アプリケーションの同時実行環境などを提供する。「Workload Manager(WLM)」機能によって,外部アプリケーションからシステム構成を変更するAPIを提供する。システム管理の効率や柔軟性を高める。
また自動管理ツールとして,IBM社のスーパーコンピュータ・システム「SP」の自動管理機能としても用いられている「Reliable Scalable Cluster Technology(RSCT)」を追加した。システムのリソースやイベントの監視および制御を行う。
AIX 5Lは米IBM,米Intel,米SCOが中心となって発足した企業向けUNIX開発プロジェクト「Project Monterey」で開発したOSをベースにする。AIX 5LにはBull社などの主要OEMが協力している。
「AIX 5L」の機能の概要は以下の通り。
・Linuxとの親和性向上
・拡張性の向上
JFS2 File Systemは最大4P(ペタ)バイトの大容量ファイルに対応できる。Java2対応で,Javaベースのアプリケーションに向けたインタフェースを提供する。AIX 5Lは最大32プロセサ構成,主記憶256Gバイトのシステムに対応できる。
・電子商取引機能
「Virtual IP Addressing」により,ネットワークの接続が切断されてもアプリケーションは動作を停止せずそのまま利用可能。IPマルチパス・ルーティングにより,ネットワークの信頼性を高めた。
・システム管理
自動システム監視機能やアカウンティング・ツールにより,リソースの利用状況に関するデータの収集を行う。コスト管理やリソース制御をサポートする。
・セキュリティ
米マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発した認証システム「Kerberos V5 Authentication」を組み込み,パスワードによる認証システムを簡易化した。
・マルチプラットフォーム対応
POWERプロセサ・ベースのシステムのほか,Itaniumプロセサで動作する64ビット・カーネルを搭載。
IBM社は「AIX 5L Version 5.1」の出荷を5月4日から始める予定である。開発ツール「AIX Toolbox for Linux Applications」は,WWWサイトで無償提供している。
また米Caldera Systemsと米Santa Cruz Operation(SCO)が同日,Itaniumプロセサ・ベースのシステムに向けた「AIX 5L version 5.1」の技術プレビュー版をリリースしたことを明らかにした。プレビュー版は無償でライセンス供与する。なお,Caldera社はSCO社のServer Software部門とProfessional Services部門を2000年8月に買収している。
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