米Napsterが,音声データの波形で音楽コンテンツを識別する技術を持つ米Relatableとライセンス契約を結んだ。Napster社が米国時間4月20日に明らかにしたもの。

 Napster社によればRelatable社は「TRM」と呼ぶ,“音声データの声紋(acoustic fingerprinting)”技術の開発を1週間前に完了したという。TRMはデータの波形により,その音響属性を分析する技術。データのファイル形式やビットレートにかかわらず,また多少の符号歪があっても識別が可能という。

 Napster社はこの技術をファイル遮蔽システムや新しい会員サービスに取り入れていく。そのために「今後,両社の技術者が協力してTRMを改良・最適化する」(Napster社)。

 「Napster社のシステムを介して交換される数百万という音楽ファイルを正確に監視できるようになる。これにより,アーティストや音楽出版会社,レコード会社に適切に使用料を配分できる」(Relatable社CEOのPat Breslin氏)。

 Napster社の音楽コンテンツ無料交換サービスを巡っては,2000年6月に米レコード協会(RIAA:Recording Industry Association of America)などがサービスの停止を求めて提訴していた。この裁判で北カリフォルニア連邦地裁が2001年3月6日にNapster社に対する仮処分命令を下し,Napster社は制限付きながら営業が可能となった。この制限とは,Napster社が著作権侵害にあたるファイルについての情報を得た場合,3営業日以内に該当楽曲の索引を削除しなければならないというもの。

 しかしこれには技術的な問題が残されていた。Napster社のファイル交換システムでは,スペルミスや文字列順序の違いを考慮したあいまい検索が可能である。つまりユーザーは表記に多少の違いがある楽曲であればダウンロードできてしまう。Napster社は現在,これら膨大な数の“変種”ファイルをいかに遮断するかという問題を抱えている。

 また米メディアなどが,Napster社のフィルター機能はまだうまく機能していないと報道(InfoWorld)するなど,同社のフィルター・システムに対する懸念の声が高まっていた。

 なおNapster社は米国時間3月13日に米Gracenote(旧名:CDDB)との提携を発表している。このとき,Gracenote社の文字列照合技術を使ってNapster社のファイル遮蔽システムを強化するという取り組みを明らかにしていた。

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