個人情報の保護に努めているWebサイトを「プライバシー・シール」の発行で保証する米国の非営利団体TRUSTeが米国時間4月11日に,企業の合併・買収,倒産に際しての顧客情報の取り扱いについて,ガイドラインの草案をまとめたことを明らかにした。

 TRUSTeは,今後60日間にわたりWWWサイトで草案を公開し,規定内容などについて,消費者,企業,政府および官公庁,弁護士,金融機関などにからの意見を幅広く求めていく。

 ガイドラインでは,個人情報がどのように利用または共有されるのかについて,消費者がすべて自分で制御できるようにし,そのうえで企業が提供された個人情報を利用することを認める,としている。

 ガイドラインの骨子は以下の通り。

・サード・パーティ機関による監視
 企業が所有する個人情報を第3者に譲渡する際には,委託を受けたサード・パーティ機関が管理/監視を行う。特に買収側や債権者への譲渡についてチェックを強化する。

・顧客への規定内容改訂通知および選択権の提供
 合併・買収,倒産などにより,プライバシー条項を変更する場合には,顧客にその旨を通知すること。顧客にプライバシ情報を制御するための選択権を与える。顧客データベースを維持しながら,信頼性を高める。

・プライバシ条項の遵守
 企業が倒産する際にも,プライバシ条項は変更せず,引き続き規定内容が遵守されなければならない。買収側,被買収側の双方が,消費者に対し社会的責任を追うものとする。

 「我々の目的は,消費者のためのプライバシー保護と企業による経営資源のフル活用という二つの行為について,適正なところで線引きをすること。情報そのものに価値がある経済社会では,顧客データなどはまさに金に値するもの。だからこそ,保護も強化しなければならない」(TRUSTe,社長兼CEOのBob Lewin氏)。

 TRUSTeによれば,相次ぐ企業の倒産などもあり,プライバシー情報の取り扱い問題に関心が高まっているという。

 例えば,2000年夏に倒産したToysmart.com社のケースでは,同社は破産申請の一環として,顧客データベースを他社に売り渡すと発表した。Toysmart.com社はTRUSTeのライセンシだったため,TRUSTeはデータ譲渡に直ちに反対した。弁護士や米連邦取引委員会などの協力も得て,結局データは譲渡せず破棄することで買収側とも話がまとまったという。

 TRUSTeは,企業や組織のWWWサイトがユーザーの個人情報を保護していることを保証する「プライバシー・シール」を発行している。“シール”は,同団体が定めた基準に従って運営されていることが認められたWWWサイトに発行する。WWWサイト側は,画像データの“シール”をWWWに貼り込むことで,そのサイトが個人情報の保護に努めていることをユーザーに示すことができる。プライバシー・シールはTRUSTeのWWWサイトで公開している。

 なお,TRUSTeは,2001年5月もしくは6月から日本でもサービスを始めることを発表している。すでに日本技術者連盟と提携しており,WWWサイトから個人情報が漏れていないかどうかをチェックしたり,ユーザーの苦情処理にあたる(詳細は「プライバシー・シール」の米TRUSTe,日本でサービス開始」)。

 TRUSTeのスポンサーには,米America Online(AOL),米Microsoft,米Intelをはじめ,米Excite@Home,米Novell,米PricewaterhouseCoopers,米KPMG Peat Marwick,米Symantec,米Verizon Communicationsなどが名を連ねる。

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