米Groove Networksが米国時間4月9日に,ピア・ツー・ピア(PtoP)対応のソフトウエア・プラットフォーム「Groove 1.0」の出荷を始めたことを明らかにした。インターネットを介した通信サービスやネットワーク・サービス,電子商取引,大企業の協業システムなどに向けたインフラとして提供する。

 2000年10月にリリースしていたプレビュー版に,ファイアウオールやセキュリティの機能を追加したほか,必要とするリソースを低減するなど機能の拡張を図っている。米Microsoftの「Office」や「NetMeeting」との相性も高めた。

 「Groove 1.0」はXMLやJava Scriptなどのアプリケーションに対応する。CRM(customer relationship management)やERP(enterprise resource planning),文書管理,製品設計など,既存のシステムと組み合わせることも可能である。

 大規模ネットワークでの集中管理機能などを提供する「Enterprise Network Services」は,ソフトウエアの導入やセキュリティ・ポリシーの管理に向けた機能などを備える。国境をまたぐグローバル・ネットワークでの利用にも対応する。

 「Groove 1.0 Network Services」は,(1)管理サービス,(2)リレー・サービス,(3)デバイス・プレゼンス・サービス,(4)コンポーネント・ホスティング・サービスを統合したパッケージ製品として提供する。各サービスの詳細は以下の通り。

(1)管理サービス
・クライアント・ソフトウエアの導入・管理,ライセンス管理
・セキュリティ・ポリシーに向けたコンポーネントやツールの組み込み
・企業ディレクトリにおけるユーザーIDの設定
・ソフトウエアのバージョン/アップグレード管理
・ソフトウエアの利用

(2)リレー・サービス
 パソコン間でのPtoP通信を可能にするstore-to-forward方式のメッセージング・キュー。

(3)デバイス・プレゼンス・サービス
 パソコンなど端末がインターネットやネットワークに接続していること,すなわち「オンライン・プレゼンス」を他のユーザーに通知する。ユーザー同士でのメッセージのやり取りをサポートする。

(4)コンポーネント・ホスティング・サービス
 コンポーネントやツールを集めたホスティング・サーバー「Component Hosting Farms」にアクセスし,ダウンロードできる。

 「Groove 1.0」は企業向けと個人ユーザー向けの2つのバージョンを用意する。まずは企業ユーザー向けの製品を提供する。価格は「Groove 1.0」が1ユーザーにつき49ドル,「Groove 1.0 Enterprise Network Services」が同8ドル(月額)。個人ユーザー向けのソフトウエアおよびサービスの提供は2001年後半に始める予定。企業向け,個人向けともに,Groove社のWWWサイトでトライアル版を無償提供している。

 「Groove 1.0」の必要システム条件は,x86プロセサ搭載のシステムで,マイクロプロセサの動作周波数は233MHz以上,主記憶は48Mバイト以上,56Kのモデム,Internet Explorer 4以上。OSはWindows Me/95/98/NT 4.0/2000。

 Grrove社は同日,アプリケーション・ベンダーなどに向けた開発キット「Groove Development Kit(GDK) 1.0」の提供も始めた。WWWサイトから無償でダウンロードできる。アプリケーションの開発を簡易化するAPIやツールなどを提供する。GDKの概要は以下の通り。

・サンプル・コード・チュートリアル
 JavaScript,Visual Vasic,VB Script,C++で書かれたサンプル・コードを提供,未読マークなど追加機能の組み込みのガイド機能を備える。

・ユーティリティ
 データベース・ナビゲーターの拡張機能,ツール・ビルダー,アプリケーションの開発,ライセンシング,導入に向けたパブリッシング・ユーティリティなど。

・SOAP(Simple Object Access Protocol)サンプル・コード

・ライブラリ・セット
Visual Basic,Visual C++,C#などに対応する。

 Groove社は,これまでに医薬品大手の英GlaxoSmithKlineに「Groove 1.0」を1万本ライセンス供与したのをはじめ,米Raytheon,米Syntek Technologiesなどともライセンス供与に関し契約を結んでいる。Syntek社を介して,国防総省国防高等研究事業局(Defense Advanced Research Projects Agency)の研究システムにも導入されるという。

 Groove社はPtoPやピア・ツー・ウェブ(PtoW)などのソリューションを手掛けるベンダー企業。米Intelが主導し,2000年8月に結成されたピア・ツー・ピア接続の共通仕様策定の業界団体「Peer-To-Peer Working Group」にも参加している。

 またMicrosoft社とも,.NETの中核として開発を進めている基本WWWサービス群「HailStorm」(開発コード名)に関し,2001年3月に提携関係に入っている。Microsoft社はHailStormの発表に併せて,Groove社のほか,米eBay,米American Express,米Click Commerce,米Expediaの5社と提携した。

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[発表資料1]
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