(2001.4.4, Paula Rooney=CRN

 3月末にLinuxカーネルの開発者会議「Linux Kernel Development Summit」が米カリフォルニア州のサンノゼで開催された。Linuxカーネルの開発者で米VA Linux Systemsの主席エンジニアであるTed Ts'o氏によれば,Linuxカーネルの次期版「2.5」は企業ユーザーに焦点を置き,サーバー機能を幅広く強化したものになるという。

 このほか,モバイルやインターネットなどへの対応の拡充も図っている。対応具体的には,最大2Tバイトにまで拡張性を高めるほか,データベース処理を高速化するための非同期I/Oや,IETF準拠のネットワーク・プロトコルへの対応を行う。米Intelの「Advanced Configuration and Power Management(ACPI)」への対応も強化し,スタンバイ・モードを加えるという。

 「サーバーやノート・パソコン向けのOSとしてもパワーアップし,Windows 2000をさらに脅かすものとなりそうだ」(Ts'o氏)。

 SummitにはLinuxカーネルの創始者Linus Torvalds氏をはじめ,カーネル開発の第一人者であるAlan Cox氏やStephen Tweedie氏なども出席した。スポンサー企業には米IBM,米Advanced Micro Devices(AMD),米EMCが名を連ねている。

 Ts'o氏によれば,「Linux 2.5」のリリースは9~18カ月後になるという。1月にリリースされている「2.4」の開発には2年間かかったので,それよりも開発期間は短縮されることになる。

 「2.5」カーネルの仕様はまだ固まっていないが,「HotPlug」への対応についても検討しているという。さらに,並列処理の「ccNUMA」「SMPクラスタリング」への拡張も視野に入れるとしている。サミットに出席したIBM社の幹部はccNUMAへの拡張機能を強く求めたという。

 Ts'o氏によれば,スポンサー企業間の“支援ぶり”にはかなり差があったという。AMD社はイベントのウェブ・キャストへの資金提供にとどまったが,IBM社はイベント資金のほかに,「travel scholarships」(奨学金)と称しておびただしい数のLinux開発企業(ISV)に資金を“配った”という。

 米Gartner GroupのGeorge Weiss氏は,「(Linux 2.5の分析や評価については)Torvalds氏のグループが,こうした機能拡張をどのようにして効率的に組み込み作業し,ソフトウエア・ベンダー(ISV)に「2.4」「2.5」の利用を促していくのか,またベンチマークはどうか,などの点についてみていく必要がある」とコメントしている。

 米Giga Information Groupのアソシエイト・アナリストであるStacey Quandt氏は,「次期版開発にあたっての課題は,企業向け機能への対応ということではなく,開発期間を短縮しつつ,多くの機能を加えるというスケジュール管理上の問題」と指摘する。

 ソリューション・プロバイダのなかには,「カーネル開発自体は,自社の事業や顧客にとって大きなプラスになるというわけではない。むしろ,WWWサーバーやファイル・サービス,プリント・サービス,GUIの向上などの拡張に期待している」とするところもある。

 「Linux 2.5のアップグレードは一見すごいように思えるが,実際にはほとんどの“ハイエンド”機能は顧客にとって直接大きなメリットはないものだ。エンド・ユーザーにとってカーネルの機能というのはあまり関係がない。それよりも,Apache 2.0やSamba-TNG,またGnomeやKDEでの変更がユーザーにとって重要となる」(ソリューション・プロバイダの米Anthony L.Awtrey Consulting,副社長のTony Awtrey氏)。

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