米Forrester Researchが米国時間3月12日に,デジタル映画とビデオ・オン・デマンド(VOD)に関する調査結果を発表した。大手映画スタジオ,独立系配給会社,テレビやCATV事業者,ビデオ・レンタル・チェーンなど映画配給に関わる50社を対象に調査を実施したもの。

 それによると,映画市場は2006年に65億ドル規模に達するとForrester社は予測している。デジタル・シネマとビデオ・オン・デマンド(VOD)はインターネットの成長を上まわる成長をみせており,映画配給の手法を変えつつあるという。

 「デジタル・シネマへの移行は早い段階で行われ,2004年には商業的に軌道に乗るとみる。CATV事業者は次世代デジタル・サービスの展開に積極的に取り組むだろう」(Forrester社アナリストのEric Scheirer氏)。

 映画館の財政的問題や映画スタジオが抱くセキュリティへの懸念が,デジタル・シネマの発展を妨げきた。しかし技術ベンダーがこうした課題の克服に取り組み,2006年には米国内における大型スクリーンの1/3がデジタル化される。また,デジタル・シネマは劇場チェーンに販売や館内宣伝などで新たな収入源をもたらす。

 「デジタル・シネマが映画館を変える一方,CATVや衛星を介したVODサービスは家庭向けビデオ業界を変える。映画ファンはパソコンよりテレビで映画を見たがるものだ。VODサービスの収入をあげるためには,パソコンではなくテレビ向けのVODに移行すべきである。多数の家庭視聴者に向けたVODサービスでは,CATV事業者がDSLやデジタル衛星放送(DBS:digital broadcast satellite)プロバイダとの競争にうち勝つだろう。」(同氏)。

 2003年~2004年に,映画スタジオはデジタルへの移行と価格設定の混乱により損失を被る。またケーブルを介したVODが要因となりビデオやDVDレンタルの売り上げが低下し始める。現在,家庭向けビデオは映画スタジオの売上高の65%を創出している。しかし2006年には米国家庭の25%以上がVODサービスを提供するデジタルCATVを導入するため,家庭向けビデオのシェアは40%まで減少する。結果的には家庭での映画試聴が急増し,映画スタジオに利益率の増加をもたらす。

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