米Napsterの音楽コンテンツ無料交換サービスが著作権侵害にあたるととして,米レコード協会(RIAA:Recording Industry Association of America)などがサービスの停止を求めていた訴訟で,北カリフォルニア連邦地裁が米国時間3月6日にNapster社に対する仮処分命令を下した。

 著作権侵害にあたる楽曲の無料交換サービスを停止するようNapster社に命じるもので,合計11の条項から成る。Napster社への処分命令については同社のサービス全体の停止命令が出るとの見方もあったが,最終判決が出るまでのあいだNapster社は制限付きながらもサービスの継続が可能になった。

 今回の仮処分命令で,Napster社は著作権侵害にあたるファイルについての情報を得た場合,3営業日以内に該当楽曲の索引を削除しなければならない。これにより楽曲の検索を不可能にし,ユーザーがダウンロードできないようにする。

 このほか,仮処分命令では原告側に著作権侵害にあたる楽曲について,そのタイトルや,演奏者・歌手名,ファイル名などの情報をNapster社に提供するよう義務づけている。なおNapster社のシステムでは,スペルミスなど多少の名称の違いがあるファイルも検索可能である。これら“変種”ファイルに対する措置として,もしファイルが該当楽曲と判断される理由が認められた場合,または原告側が該当楽曲と判断した場合は,双方はこれらを除外するための適切な措置をとらなければならない,とする条項も盛り込まれている。

 なお,サンフランシスコ第9巡回区連邦控訴裁判所は米国時間2月12日に,RIAAが求めていたNapster社業務の完全停止要求を却下し,このとき連邦地裁に対して,同地裁が先に下していたNapster社に対する仮処分命令の内容を修正するように命じていた。

 またNapster社は米国時間3月2日に,著作権侵害にあたる楽曲の無料交換サービス停止する自主規制措置をとったことを明らかにしていた

 今回の仮処分命令を受けて,RIAAが同日以下の声明を発表した。

 「地裁がこんなにも迅速に決定を下してくれたことを嬉しく思う。著作権侵害の楽曲についての情報は,裁判所が定めた通り迅速に提供していくつもりだ。Napster社による著作権侵害行為の撲滅を願っている」(RIAA)。

 これについてNaspster社は,現在のところコメントを出していない。

◎関連記事
<Napster裁判>
米ナップスターが妥協策を発表,無料のファイル交換サービスを中止へ
Napster裁判の“歴史的”意義を考える,21世紀の技術開発に一石
米ナップスターが“解決策”,著作権管理の仕組みをファイルに組み込み
【TechWeb特約】連邦控訴裁が「Napsterは著作権侵害を助長」と判断
レコード協会と米音楽出版協会が,差し止めを求めNapsterを提訴
米控訴裁, Napster の業務停止命令執行を延期
Napster が連邦控訴裁に提訴,ユーザにCD購入を呼びかけるキャンペーン開始
本音と思惑が錯綜する米Napsterと独Bertelsmannの提携
米ナップスターとBertelsmannが会員制ファイル交換サービス,著作権料を支払う
どこへ行くNapster,せき止められぬファイル交換ソフトに勢い

<Napster以外の著作権裁判>
米音楽出版協会とMP3.comが和解,100万曲でライセンス料は最大3000万ドル
インターネット時代の著作権を問い直す MP3.com 裁判
ネット時代の著作権保護に一石,DVD暗号解読ツールの流通に「違法」判決
【TechWeb特約】「米映画音楽業界の訴訟が事業を妨害」とScour
音楽もビデオもタダに? 娯楽産業を震撼させるファイル交換ソフト

<調査>
「ピア・ツー・ピア型ファイル交換のビジネスモデルは不滅」と米ガートナー
ナップスター・ユーザーの行動パターン,慣れるほどCD購入は減る傾向に
「Napsterの学内利用禁止を掲げる大学は全体の34%」,Gartner調べ
30%のパソコン・ユーザーがNapsterを利用---米調査会社のデータ
「ネット介したファイル交換サービス,利用者の28%は違法と認識」と米調査
制御できないコンテンツ流通,2005年に音楽/書籍産業の損害額は46億ドルに
「無料音楽配信サービスにはいずれ規制の網」,英社がユーザ意識調査
[仮処分命令の全文(PDFファイル)]
[RIAAの発表資料]