米Intelが,特許係争に関してジレンマ状態に陥りそうだ。

 同社は6月23日に,チップセット・メーカの台湾VIA Technologiesを契約不履行と特許侵害でカリフォルニアの連邦地方裁判所に訴えた。Slot1などP6アーキテクチャのバスが争点になる係争である。一方のVIA社は,米National Semiconductor(NS)のCyrix部門を買収して,x86プロセサ関連の知的財産権と設計者を手に入れる手段に出た赤字部門のCyrixを買収するVIA社の意図には分かりづらいところがあるが,一つ考えられるのはIntel社の提訴に対する対抗措置といった意味合いだ。これが,Intel社をジレンマに陥れる。

 VIA社が買収したCyrix部門は,かつてx86プロセサの特許侵害でIntel社を訴え,結局はIntel社とクロスライセンス契約を結んだ(訴えたのは1997年5月。同じ年の11月にNS社がCyrix社を買収したので,正確にはNS社とIntel社のクロスライセンスの形を採った)。VIA社にしてみれば,『Cyrix部門がクロスライセンスによって取得した権利は,買収によってVIA社に帰属する』と主張できることになる。だから,「Intel社の特許侵害係争は無効だ」というわけだ。

Intergraph係争と攻守ところを代える

 実は,これに似た対立の構図がIntel社のまわりにもう一つある。攻守ところを代え,Intel社がVIA社の立場に立っているところが大きく異なる。

 問題の係争は,Intel社と米Intergraphの裁判である。1997年11月17日にIntergraph社は,Intel社がマイクロプロセサでの独占的地位を使ってIntergraph社を市場から排除したとして提訴した。このなかで「Clipper」と呼ぶRISCチップの特許が問題となった

 ここではIntel社がVIA社の立場に置かれ,「NS社がClipperの開発元である米Fairchild Semiconductorを買収した。このNS社とIntel社はクロスライセンス契約を1987年に結んでいる。Clipperの特許もNS社とのクロスライセンス契約に含まれている」と主張した。つまり先の表現を使えば,『NS社が買収によって取得した権利は,(NS社との)クロスライセンス契約によってIntel社に帰属する』となる。

 ところがIntergraph社との係争では,Intel社の主張を退ける判断を裁判所は示した。「Intel社とNS社のクロスライセンス契約には子会社は含まれず,Intel社はFairchild社の合意がなければClipperの特許ライセンスを得られない」とした。

 Intel社がIntergraph社との係争で「裁判所の判断は間違っている」と主張すると,返す刀でVIA社から「だったらCyrixのクロスライセンス契約も有効だから,Intel社とVIA社のあいだにも特許に関する問題はない」と言われかねない構図だ。