「2000年における世界の携帯電話機市場は,出荷台数ベースで前年比45.5%増の4億1270万台となった」。米Gartner Group Dataquest社が米国時間2月15日に調査結果を発表した。前年の台数は2億8358万台だった。
Gartner社によれば,2000年の携帯電話機市場は一時的に落ち込んだ時期があったものの,全体的には年間を通して好調だったという。しかし,「ここ数年間市場はうなぎ上りの状況だったが,ここへきて急ブレーキがかかっている」(Dataquest社)としている。
「実際のところ4億1270万台という数字は事前の予測を600万台も下回っている」(Dataquest社のシニア・アナリストのBryan Prohm氏)。Dataquest社は2000年9月の時点では,「携帯電話機の出荷台数は2000年末に4億2000万台を超える規模になる見込み」と予測していた。
ベンダー別にみると,フィンランドのNokiaが前年比65.5%増の1億2637万台を出荷,30.6%のシェアを獲得してダントツの首位に立った。米Motorolaがシェア14.6%で2位につけNokia社を追うが,伸び率が25.7%と大手ベンダーのなかで最も低かったため,両社の差は2倍以上に広がった。一方で,Nokia社の「65.5%増」は,ベンダー各社のなかでも最も高い伸び率。
3位にはシェア10.0%でスウェーデンのEricssonがつけた。上位3社で市場全体の55%強を占める。ちなみにEricsson社は2001年1月に,「携帯電話機製造から撤退し,米Flextronics Internationalに製造委託する」と正式に発表している。
以下,4位独Siemens,5位松下電器産業,6位韓国Samsungといずれも順位に変動はない。6位のSamsung社は前年比59.0%増と大きく伸ばし,5位の松下との差をぐっと縮めた。詳しい調査結果は以下の通り。
■表 2000年における世界の携帯電話市場/ベンダー別出荷台数(単位:1000台)
順位 | ベンダー名 | 2000年台数 | シェア | 1999年台数 | シェア | 伸び率 |
1 | Nokia | 126,369 | 30.6 | 76,335 | 26.9 | 65.5 |
2 | Motorola | 60,094 | 14.6 | 47,818 | 16.9 | 25.7 |
3 | Ericsson | 41,467 | 10.0 | 29,785 | 10.5 | 39.2 |
4 | Siemens | 26,989 | 6.5 | 17,687 | 6.2 | 52.6 |
5 | Panasonic | 21,511 | 5.2 | 15,581 | 5.5 | 38.1 |
6 | Samsung | 20,639 | 5.0 | 12,982 | 4.6 | 59.0 |
その他 | 115,662 | 28.0 | 83,393 | 29.4 | 38.7 | |
合計 | 412,731 | 100.0 | 283,581 | 100.0 | 45.5 |
出典: Gartner Group,Dataquest社 (February 2001)
「携帯電話機業界にとって2000年は第3世代(3G)システムへの移行期にあたり,様々な問題に直面した。中小ベンダーの参入が進み,中国などアジア地域での需要が爆発した。しかし一方で,WAP(Wireless Application Protocol)技術はユーザーを引き付けることができず,需要の大波を起こすはずが“さざ波”程度にしかなっていない。無線サービス事業者の戦略をみても,顧客の新規獲得ではなく,現在の顧客を繋ぎ止める方向に重点を置いている」(Gartner社)。
Dataquest社のWorldwide Telecommunications部門主席アナリストのPeter Richardson氏は「携帯電話機市場は,長期的にみると非常に厳しい」と警告する。「次世代技術に対応した携帯電話機の開発には莫大な投資がかさみ,リスクも少なくない。こうした環境で安定した利益を出していけるベンダーなどほとんどないのではないか」(Rchardson氏)。
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