(2001.2.7,Barbara Darrow=TechWeb News

 ベンチャー・キャピタル(VC)による投資が一段と失速している。米PricewaterCoopers(PWC)が最近発表した調査報告「MoneyTree Survey」によれば,2000年第4四半期におけるVCの投資額は前期の168億ドルから137億ドルへと18%も落ち込み,これで3四半期連続のマイナス成長になったという。VC企業の数も9%減の853社と1割近くが姿を消した。

 「だからといって,慌てることはない」---。報告書をまとめたPWC社のVC調査部門ディレクター,Kirk Walden氏は次のように話す。「よいニュースもある。それは,こうした“悪いニュース”がそれほど悪いものではないということだ。株式市場では,こうした流れをむしろ好感している」。

 投資額が落ち込み,消費者向けのB2C事業などがバタバタと倒れている。「彼らにとって,E-commerceはもはや“E-comatose(コマトス/昏睡状態)”に陥った」(Walden氏)。一方で,ネットワーク関連や通信関連などインフラ技術を手掛ける企業では,VCによる投資がいまもなお活発だ。「ハブやルーター,通信機器,一部の無線サービスが好調」(Walden氏)。

 「VCは新規事業への投資から手を引き始めた」と一部で報じてられている点については,実際にはそれを裏付けるデータはほとんどないという。PWC社が米Venture Oneの協力を得てまとめた調査結果によれば,ベンチャー事業の「立ち上げ期」への出資比率は1998年に38%,1999年に39%,2000年に37%と安定しており,新規事業に限って言えば目立った後退はないようだ。

 相次ぐドットコム事業の倒産について,Walden氏は次のように説明する。「VCはあまり言いたがらないが,彼らはほとんどの出資先ドットコムで大損をした。大手は分散投資の戦略を取っているから痛みも少ないが,小規模VCや1998年半ば以降の参入組はかなりの痛手を被っている。インターネットがあまりにも急速に成長するのを見て鼻血が出るほど興奮し,とにかく勢いをつけて飛び込んでしまったのだが,ここへきて成長率は“穏やか”に。そこでVCは収益をにらんで,爆弾は抱えないという戦略に出た。これが多くのドットコムを葬り去ったのである」。

 「よって,VCの投資案件の選別は格段に鋭さを増してきている。現在投資している事業にあとどれくらい追加投資するのかについては『分からない』との回答が多い。つまり,次の一手に対し,態度が極めて慎重になっているのである」。

 VC事業の「失速」は地域によってバラつきがあるが,速報値をみると,シリコン・バレーでは第4四半期投資額が前期の約72億ドル強から約54億ドル弱へと26~7%も落ち込んでいる。

 労働者もドットコムを離れ従来の伝統企業へ戻り始めた。米IBMの役員,John Wolpert氏もその1人である。「今後,ドットコムの店じまいや,やり手幹部が伝統企業にカムバック,といったニュースがあふれるだろう」(Wolpert氏)。

 面白いことに,ベンチャー出資に黄信号が点灯し始めたにもかかわらず,高収益投資家リストに名を連ねるプレーヤの数は増えているという。Ethernetを発明した開発者で,その後,投資家向けジャーナリストとして活躍したBob Metcalfe氏は,最近VCの米Polaris Venturesへと転身した。これと前後して,米ウオール・ストリート・ジャーナル紙の記者Jon Auerbach氏もVC入りしたという。IBM社で事業戦略を担当するJohn Landry氏は「いったいまともなジャーナリストは残っているのか?」と苦笑するが,自らも前身は“ネット企業家”だ。

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