米Adobe Systemsが米国時間1月29日に,電子ブック閲覧ソフト「Adobe Acrobat eBook Reader 2.0」と電子ブックの配信サーバー向けソフト「Adobe Content Server 2.0」を発表した。

 Adobe社は,2000年に電子ブックの技術,タイトル制作,配信サービスなどを手がけるGlassbook社を買収し,電子ブック事業部門に移管した。この買収によって,Glassbook社の電子ブック閲覧ソフト「Glassbook Reader」「Glassbook Plus Reader」やコンテンツ配信ソフト「Glassbook Content Server」を取得している。

 「Adobe Acrobat eBook Reader 2.0」はGlassbook Readerのアップグレード版となるもの。「Adobe Content Server 2.0」も同様に,Glassbook Content ServerをPDF(Portable Document Format)フォーマットに対応させたもの。パッケージング機能やセキュリティ保護機能,安全な配信サービス機能などを備える。

 Adobe社はWWWサイトで「Adobe Acrobat eBook Reader 2.0」の無償提供を始めた。対応言語は英語のみ。Windows版とMacintosh版がある。「Adobe Content Server 2.0」はWindows版のみ。まもなく提供を始める予定。

 またこれに関連してAdobe社は,オンライン書店の米Barnes & Noble.comで販売するPDF対応の電子ブックを拡充したことを明らかにした。両社が同日発表したもの。Barnes & Noble.com社は書店大手の米Barnes & Nobleのオンライン事業部門で,米国におけるAdobe社の電子ブックの独占販売契小売業者である。

 両社が拡充した電子ブックのタイトルは,「The Australian Outback」「Orpheus Emerged」「Evolve!」など。

 Adobe社は2000年8月に,WWW,印刷/出版などの市場に向けた新たな戦略を発表しており,このうち「eBookソリューション」として,米Glassbookの買収やBarnes & Noble.com社との提携拡大を挙げていた。同社の新戦略は,「eBookソリューション」のほか,「WWWソリューション」「印刷/出版ソリューション」の三分野から成る(詳細は「AdobeがSeyboldで電子ブック,WWW,印刷・出版の新戦略を発表」)。

 なお,Barnes & Noble.com社は2001年1月4日に,電子ブック部門「Barnes & Noble Digital」を立ち上げたことを発表している。

 米IDCの調査報告によれば,2000年の消費者向け電子ブックの米国市場規模は900万ドルで,これが2004年には4億1400万ドル規模に拡大するという。「書籍出版は今後デジタル化が進む最大の分野。すでに多数の大手企業が電子出版を手がけている」(IDC,eMediaプログラム上級アナリストのMalcolm Maclachlan氏)。

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[発表資料1]
[発表資料2]