「パソコン市場は飽和状態」との調査報告が相次いでいる。こうしたなかで,米Gateway,米Micron Electronics,米Dell Computerなどパソコン・ベンダー企業各社が,ソフトウエアやオンライン・オプションの提供などパソコン以外の製品やサービスに力を入れ始めている。

 Gateway社の社長兼CEOであるJeff Weitzen氏は,「当社は,もはや純粋なパソコン・ハードウエア・ベンダーではない」と宣言している。(IT Pro注:「PC以外の売り上げが50%以上と脱パソコン化が進む米Gateway」)

 パソコン販売を牽引してきた「(米国の)好景気」という支えがなくなれば,パソコンがすでにある程度行き渡っている市場での拡販は難しくなる。IDCのアナリスト,Roger Kay氏は,「消費者市場,小企業向け市場の両方がここ数週間にわたって急速に悪化している」と話す。

 Kay氏によれば,2000年第4四半期における米国のパソコン市場は,前年比17.4%増となる見込みだが,2001年第1四半期は伸び率が約5%下がり,出荷台数は1380万台程度にとどまるという。また世界市場でも少なくとも10%は落ち込むとみており,出荷台数は3630万台と予測している。「今後さらに下方修正する可能性も高い」(Kay氏)。

膨れ上がるパソコンや部品の在庫

 感謝祭の週など通常の書き入れ時での消費者向けパソコン販売が落ち込み,様々な面で景気の減速感も顕著になってきた。パソコンやパソコン向け半導体の在庫は,1~2週間だったものが5週間に膨れ上がっているという。

 米Eric Rothdeutschのアナリスト,Robertson Stephens氏は「需要の後退に対応する在庫調整をどの程度行っていくのかが重要」と指摘する。

 米スタンフォード大学経済学部助教授のRomain Wacziarg氏によれば,「ドイツやフランスなど欧州市場の主要国は,第4四半期のGDPが3%成長で経済は比較的堅調な状態である。一方で米国経済は第4四半期に失速し,GDPは2.5%成長にとどまる見込み。専門家などの予測を合計すると,2001年における米国経済の成長率は2000年の5.3%成長から後退し,3.0%程度にとどまる」という。

 パソコンの個人ユーザー市場は,価格が需要を左右するが,大企業向け市場では,主に景気動向が購買の判断材料となる。こうした予測からすれば,事態は非常に深刻となる。

 半導体市場は,1998年第4四半期以降,連続7四半期にわたって安定した高成長を遂げてきた。2000年第2四半期には,売上高ベースで前年同期比48.8%増を記録し,売上高は435億ドルとなった。一方で半導体市場では,市場サイクルに応じたベンダーの生産拠点拡張などが相次いだ。このため,サプライ・チェーン管理(SCM)が合い言葉となり,各社とも半導体や抵抗素子,その他の部品などの在庫削減に必死の状態である。

 2000年は,「CEM(Computer Equipment Manufacturer)」と呼ぶコンピュータの組み立てを請け負うOEM企業も増大した。CEM企業は突然の在庫切れなどを避けるため在庫の確保を積極的に進めたが,結局,これが下半期になって過剰在庫を生み出してしまった。アナリストらによれば,こうした在庫が2001年まで残るとみている。

 米Thomas Weisel Partnersのアナリスト,Jim Savage氏によれば,CEM大手の米Solectronが抱える在庫は1999年11月から2000年8月までの間に23億ドル分も増大したというという。

 こうした現状から,ベンダー各社はパソコン以外の製品やサービスでの事業機会を探っている。パソコン・ベンダーだけではない。米Intelの投資部門など半導体ベンダーも出資先企業の状況に目を光らせる。ハードウエア企業の「選択」が吉と出るか凶となるかは,2001年のふたを開けてみるまでわからない。

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