「WAP(Wireless Application Protocol)対応携帯電話機の第一世代機が市場に投入されたが,この技術が最高のものとは限らない。WAPという先導車に飛び乗ろうと考えている企業はWAPが利用可能な唯一,最善の技術ではないことをわきまえておくことが重要だ」---。通信市場の調査コンサルティング会社として知られる米Ovum社は,5月23日に発表したレポート「WAP Market Strategies」の中でこのように警告している。

 「WAPはモバイル・インターネット技術のすべてでもなければ最終技術でもない。現時点では確かに先端技術ではあるが,モバイル・ネットワークの改良が進むにつれてより洗練された技術が出てくる可能性が高い。WAPに代わる技術が実用化された時,WAP参入者はその反動を克服するために大きなつけを払うことになるだろう」---。Ovum社のアナリストでレポートの責任著者であるMichele Mackenzieはこのように語っている。

 レポートによれば,WAP技術の開発は,同社が「モバイルの世界とインターネットの世界との衝突」と呼んでいる参入企業間の様々な思惑や利害の調整が必要であるために今後順調に進むとは思えないという。WAPに対する要求条件があまりにも多様であるため,次期WAP技術の早期確立は遅れることが予想される。実際,WAPは今後3年間の間にXMLベースの無線アプリケーション・プロトコルの追い上げに圧迫され,使われなくなる可能性があるという。

 WAPは現在,産業界の広範囲な支持を得てはいるものの,標準化の遅れなどにより,他の技術も採用する企業が現れている。例えば,Microsoft社はデュアルモード・マイクロブラウザをバックアップとして準備中であるという。

 さらに悪いことには,現行の第2世代の携帯電話サービス向けのWAPハンドセットの開発は,これからの2.5世代以降への流れとは方向がずれている。つまり,初期のWAPハンドセット・ユーザーは,2.5世代以降の高速通信機能を利用するためには別のハンドセットを購入しなければならなくなる。これは顧客の利益にならないし,ハンドセット・メーカーにとってはマーケッティング戦略上の大きな問題となる。

 このような状況を踏まえてOvum社は,モバイル・インターネット・サービスの参入企業に対して,WAP以外の技術,例えばXMLベースの技術なども視野に入れて戦略を立てるように警告している。

 Ovum社は,モバイル・ユーザー数は2006年までに全世界で15億人に達し,6億8400万人がマイクロブラウザ対応のサービスを利用するようになると予測している。これに対して固定インターネット・ユーザーの数は5億人と予測されている。また,2006年までにはインストール・ベースで82%がマイクロブラウザ対応となっていると見ている。金額ベースでは,マイクロブラウザのユーザーからの年間サービス料収入は2006年には3370億ドルに達するものと予測している。

[発表資料]