広帯域通信ICベンダーの米Broadcomが米国時間11月28日に,MPEG-2技術をもつイスラエルのLSIベンダーVisionTechを買収することで両社が最終的な合意に達したことを明らかにした。Broadcom社にとっては,2000年に入って12番目の買収劇となる。

 買収は株式交換で行い,Broadcom社が796万株を発行してVisionTech社の全株式を買い取る。米Wall Street Journal紙によれば,買収総額は7億7660万ドル。この買収については,すでに両社の役員会で了承されており,買収手続きの完了は60日以内を予定している。

 VisionTech社は1996年の設立。イスラエルのHerzliyaに拠点を置く。Personal Video Recording(PVR)やビデオ会議システム,ストリーミング・ビデオ対応民生機器に向けたMPEG-2の圧縮/伸長チップを手掛ける。

 同社が開発したビデオ/オーディオ向けのMPEG-2符号化チップ「Kfir-2」は,米Microsoft傘下のWebTV Networks部門,米MotorolaのBroadband Communications部門(旧General Instrument社)をはじめ,米Scientific-Atlanta,英Pace Micro Technology,米PVRなどのセットトップ・ボックス(STB)・ベンダーが採用している。

 この買収によりBroadcom社は,自社のインタラクティブTV向けビデオ復号チップとVisionTech社のMPEG-2圧縮技術を組み合わせたPVR対応STBソリューションを開発する。「STBベンダー向けに,性能や柔軟性を高め,コストを抑えたソリューションを提供していく」(Broadcom社)。両社は11月29日にラスベガスで開幕する展示会「Western Cable Show」でデモンストレーションを行う予定である。

 この買収によりBroadcom社は,VisionTech社を子会社「Broadcom Israel」として立ち上げ,イスラエルの中核拠点とする。新会社はVisionTech社の従来の事業を引継ぎ,MPEG圧縮技術の開発に当たる。また,「同地域に点在する新興企業のなかから,シナジー効果を狙える技術について評価を行っていく」(Broadcom社)という。

 PVRは,放送中の番組を巻戻して再生したり,再生時に特定場面へスキップ,番組をスピード検索など,TVの視聴に幅を持たせる機能を備える。米Cahners In-Statの報告によれば,PVRを搭載したSTBの出荷台数は2001年から2003年までに年平均成長率275%で拡大し,2003年には800万台に達するという。

 Broadcom社の企業買収は今年に入ってこれで12件目となる。11月6日にも,通信プロセサLSIベンチャーの米SiByteを20億ドルで買収するとの発表を行っている。

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[発表資料]