米WorldComが米国時間11月1日に,家庭向け電話通信事業など収益の低い部門を切り離す事業再編計画を発表した。現在のWorldCom Inc.を,「WorldCom」および「MCI」の2部門に分割し,データ通信事業などの中核事業や成長分野をWorldCom部門として本体を集約する。両部門とも,株価が業績に連動するトラッキング・ストックを発行する。

 「事業別に経営面で機動力を持たせ,経営資源の効率を最大限に高める。株主・投資家などにとっては,投資の対象が明確になる」(WorldCom社社長兼CEOのBernard J.Ebbers氏)。ちなみに,同社は7月に米Sprintの買収交渉が破談となって以来,株価が5割程度の水準にまで下落している。

 具体的には,WorldCom社を,データ通信,インターネット,WWWホスティング,海外事業,無線通信,企業向け長距離電話,企業向け市内電話の7部門で構成,一方のMCI部門に,家庭向け通信,小企業向け通信,インターネット接続のプロバイダ事業,ページャ事業,電話用プリペイド・カード事業を置く。

 WorldCom部門の年間売上高は230億ドル。このうち,同社の中核事業であるデータ通信,インターネット,海外事業の3部門で160億ドルを占める。「今後,IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)やWWWホスティングなどの成長市場にも注力するほか,電子商取引向けのインターネットや高速ネットワーク・サービスを欧州やアジア太平洋地域にも拡充し,世界規模でのサービスを展開していく」(WorldCom社)。

 一方のMCI部門は,年間売上高が160億ドル強の規模である。

 WorldCom社は同日,2000年第4四半期(10-12月期)と2001年通年の業績見通しについても発表した。2000年第4四半期の売上高は前年同期比7~9%増となる見込み。これを部門別でみると,WorldCom部門での業績は12~14%増と成長しているが,MCI部門では伸び悩んでいる。
 WorldCom部門は第3四半期も,前年同期比11億ドル増の41億ドルと好調だった。2001年通年では,WorldCom部門が12~15%で成長,一方のMCI部門は0~2%減とやや落ち込む見込み。両部門を合わせると7~9%増。「WorldCom部門は2005年まで年平均14~16%での成長が見込める」(WorldCom社)。

 再編計画はすでに役員会で了承されており,Bernard J.Ebbers氏が引き続き社長兼CEOとしてWorldCom社の指揮を執り,両部門を統括する。MCI部門の経営陣については,今後決定する。株式交換の手続き完了は2001年前半を予定している。現行のWorldCom社の株式25株に対し,MCI株1株を割り当てる。

 なお,これに先立って,米AT&Tも米国時間10月25日に,法人向け,家庭向け,広帯域,無線の4社に分割する事業再編計画について発表している。

◎関連記事
WorldComによるSprint買収がついに白紙に戻る
米史上最大の買収計画の破談で,通信業界の再編が始まる
合併の白紙撤回はSprintの破滅を招く」とDataquest
AT&Tが分割を正式発表,法人向け,家庭向け,広帯域,無線の4社に

[発表資料1]

[発表資料2]