(2000.10.20,Mark Hachman=TechWeb News

 今年のクリスマス・シーズンにパソコンを購入するのはどのような消費者か?

 それは,すでに1台を所有している消費者。という見方が広がっている。米国のパソコン市場がかつてないほど成熟したいま,パソコン・メーカー各社は今シーズンは2代目のパソコンや,子供などの家族向けのパソコンの需要が高まると見込んでいる。

 このため,メーカー各社はネットワーク向け製品をバンドルしたり,ビデオ編集やオーディオのための周辺機器/ソフトウエアを提供するなどして,売り上げの増加を目指す。しかしこれには,「魔法の方程式と呼べるものがないのも事実だ」(メーカー各社)。

 しかし,「2代目パソコンの需要だからといって,消費者が必ずしも低価格のパソコンを求めているとは限らない」というのが,アナリストやパソコン・ベンダー幹部の見方である。子供向けに低価格機を購入するという消費者もいるが,自分用にハイエンドのマシンを購入し,これまでのパソコンは家庭内でほかの用途に使うという人が大半だという。

 「ほとんどの人が2代目のパソコンを買うかアップグレードする時期に来ている。米国市場におけるパソコンの普及率は50~60%。新規顧客を掘り起こすのは難しくなっている」(米PC DataアナリストのStephen Baker氏)。

 需要低迷がささやかれる一方で,今年のホリデー・シーズンの米国パソコン販売台数の伸び率は昨年を上回ると米IDCは予測している。同社によるとパソコン・メーカーによる1999年第4四半期の販売台数は1250万台で,前年同期に比べた伸び率は15.7%である。今年の第4四半期は同17.1%増の1460万台になるという。

 なおこの業界のホリデー・シーズン,つまり活況期とは「ブラック・フライデー」と呼ばれる感謝祭の翌日から始まると考えられている(10月よりゆるやかに伸びてブラック・フライデーで幕開けとなる)。

 2代目のパソコン需要を見込んで米Dell Computerでは,パソコン間を無線でつなぐネットワークのメリットを消費者に訴えるなど,「高性能のパソコンをより安価で提供し,サポート体制も充実するように努める」(Dell社Home and Small Business Products部門のBrian Zucker氏)という。

 しかし,これら製品はまだ高価であることも事実である(Dell社のWWWサイトで販売する米3Comの無線スタータ・キットは無線ポート,3枚のPCアドオン・カード,ソフトウエアなどから成り,価格は1328.95ドル。モニタなしの800MHz Pentium III搭載Dimension 4100よりも高価である)。またDell社では職場で使うパソコンの性能を家庭にも求めるという消費者の需要も高まるとみている。

 1000ドル以下の低価格機のブームは過ぎ去り,消費者は「多くのものを得るために多くを支払うこともいとわなくなってきた」と語るのは米HP(Hewlett-Packard)の広報担当者。「バリューPCと呼ばれる低価格機の価格帯は799ドル。しかし好調なのは1000~1300ドルの機種だ」(同氏)。

 ちなみに,米国小売り市場の1/3が1000ドル・クラスの製品である。一方サブ600ドルと呼ばれる製品のシェアは42%から22%に落ち込んでいる。

 HP社のホリデー・シーズンに向けた取り組みとして,インターネット接続するメリットをアピールしていくという。「インターネットは今もなおパソコン購入動機のトップ」(同社Worldwide Product部門マネージャのEric Bone氏)。このほか同社では筐体のカラー・バリエーションやデジタル画像/ビデオといった機能についても訴え,販売戦略を展開していくという。

 パソコン・メーカー各社は米Apple ComputerがiMacで行った手法を見習っていることを認めている。Apple社は無線LANハブ「AirPort」やムービー編集ソフトの「iMovie」でも,新たな市場開拓の道筋をつけたが,競合メーカーにとってその第一段階が筐体のカラー化のようだ。「外見もまた重要だ。価格と性能が同じなら消費者は見栄えの良い方を選ぶ」(HP社Eric Bone氏)。

 一方「Gateway Country」と呼ぶ販売店をもつ米Gatewayは,これを活用し,パソコンの可能性を消費者に訴えていくという。デジタル音楽やデジタル写真向けの製品をバンドルし,またゲームのトーナメントを販売店で開催するなどして,同社製品の機能を消費者に見てもらうとしている。

 「プレイステーションなどのゲーム機ではなくGateway社のパソコンを購入するよう消費者に訴えていく」(同社)という。「我々は,消費者に技術やハードウエアを提供するだけでなく,技術に支えられたパソコンのメリットを理解してもらう」(Gateway社Consumer Product Marketing部門ディレクタのMike Ritter氏)。

 またメーカー各社はどういったハードウエア構成が人気を得るのか,その明確な解はないとし,ハード・ディスク装置,メモリ,プロセサ,周辺機器などについてさまざまな構成の製品を投入する計画だ。これにより市場における大多数の顧客を獲得しようと,しのぎを削る構えである。なお搭載メモリの容量は,Windows MEを満足に動かすために最低でも128Mバイトになると考えられる。

 プロセサについて,米Advanced Micro Devices(AMD)と米Intelの製品を搭載したパソコンが五分五分の勝負,とみるのはPC Data社アナリストのStephen Baker氏。同氏によると,Intel社は低価格パソコンの市場でAMD社のシェアを奪いつつあるという。「K6-2はもはや古く,真にCeleronの競合製品とは考えにくい」(同氏)。

 また11月20日に出荷が延期されたPentium 4について,アナリストやメーカーはこれによる影響はないと答えている。Pentium 4はハイエンド製品に向けたチップで,ごく一部の人々にしかアピールしない,というのがその理由である。

 「我々には影響はない。(Pentium 4搭載機は)我々が消費者に提供する一つの製品に過ぎない」(Dell社のBrian Zucker氏)。「我々は,Pentium 4搭載機はニッチ製品と位置づけている」(Gateway社のMike Ritter氏)。

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