米Advanced Micro Devices(AMD)が米国時間6月5日に,ドイツのドレスデン工場(Fab 30と呼ぶ)から「売り上げにつながる初めてのマイクロプロセサを出荷した」ことを明らかにした。1996年10月の着工以来,AMD社はこれまでに総額で19億ドルを同工場に投じている。ドレスデン工場は,「Athlonの生産を2000年後半は4半期ごとに倍増させる」という同社の戦略の中核をになっている。

 出荷したのは0.18μmルールの半導体技術を用いたAthlonプロセサ。2次キャッシュをオンチップ化した新型Athlonである。配線材料には銅(Cu)を使う。3700万トランジスタを1チップに集積する。最高動作周波数は1GHzである。「2000年第2四半期に,Athlonの出荷個数の5〜10%をドレスデン工場で生産する」(AMD社)という。

 今後は,ドレスデン工場と米国テキサス州のオースチン工場(Fab 25と呼ぶ)の2カ所でx86互換のマイクロプロセサを製造することになる(ドレスデンはCu配線品,オースチン工場はAl配線品)。ドレスデン工場では現在0.18μmルールの半導体技術を使っているが,「将来的には0.13μmへの移行も可能」(AMD社)としている。

 ドレスデン工場には,マイクロプロセサを年間5000万個製造する能力があると業界ではいわれている。この生産能力も,「2001年末には使い切る」(AMD社)という。この数字を額面通りに受け取ると,2002年にAMD社は「パソコン向けマイクロプロセサで50%近いシェア」を獲得することになる。

 こうなると,2002年以降は製造能力が不足することになる。実際,2000年第1四半期の決算発表時に記者から,「工場のキャパシティが不足するのではないか」との質問が飛んだ。この件については,「問題ない」として新工場の建設は予定していないことを明らかにした。宿敵Intel社が2000年に60億ドルもの半導体投資を行うことについても,「投資したからといってすぐにアウトプットがあるわけではない。パソコン市場のパイが拡大しているので,Intel社の投資がAMD社の業績に影響を与えることはない」(Jerry Sanders会長)とした。

 ちなみにAMD社は,当面の目標を「2001年にパソコンのシェアの30%」に置く。かつては,AMD社ではまかないきれないドレスデン工場の生産能力を,他社(ウォールストリート・ジャーナルによると米Motorolaが候補だった)に使ってもらうためにAMD社はパートナ探しを行っていた。この件については,「もうパートナは探していない。すべてAMD社の製品を流す」としている。

 Athlon工場には,デザイン・センタ部門「Dresden Design Center」も置く。ここではチップセットや通信系のプロセサなどの開発・設計を行う。通信系プロセサには,EhternetコントローラやHomePNA準拠の家庭内ネットワーク向けLSI,無線LAN LSIなどが含まれるもよう。現在ドレスデン工場には1150名(2001年末には1800名を予定)の従業員がいるが,うち70名はデザイン・センタの要員である。

 なおAthlon系列などマイクロプロセサの開発・設計は従来通り,オースチンで行う。

■海外で発表されたニュース・リリースの抜粋を速報体制で制作しています。あくまで抜粋ですので,内容などにつきましては必ず文末にある「発表資料」へのリンクでご確認下さい。


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