米IBMは米国時間10月3日,次世代ハイエンド・サーバー「eServer」を発表した。同社が電子商取引向けに「Project Mach 1」プロジェクトの一環として開発したもの。「メインフレーム級の信頼性とスケーラビリティを持たせた」(IBM社)。最も信頼性が高く,ミッション・クリティカルなデータやトランザクションに向けた「zSeries」をはじめ,大規模向け高性能サーバー「pSeries」,中規模向け「iSeries」,x86ベースの低価格サーバー「xSeries」の4種を用意した。

 このうち最上級のzSeriesとして,IBM社は同日,「eServer zSeries 900(z900)」を発表した。1999年5月発表・出荷のS/390 G6の後継機。電子商取引向けメインフレームとして,1台のサーバを仮想的に数千台のサーバとして扱えるという。ASPやISP,WWWホスティング企業などに拡販する。リリースは2000年12月18日を予定している。

 さらにIBM社は,z900向け64ビット・システムのOS「z/OS」を発表した。ソフトウエアの料金体系も一新し,従来のようなメインフレーム・システム全体のMIPSに応じた月額固定制から,プロセサでの実際の利用量に応じた従量制に切り替える。「価格にフレキシビリティを持たせた」(IBM社)。

 BMC SoftwareやCandle,Computer Associates,Cumpuware,Isogon,SAGA,Software AGなどの独立ソフトウエア・ベンダ(ISV)が,既にこうした新しい料金体系に対応することを決めているという。また,米PeopleSoftや独SAP,Siebel SoftなどもCRMやERPソフトをz900に対応させる。

 z900とz/OSの開発には,2年間の年月と1億ドルの費用をかけたという。ネットワークやストレージ・システムへの高速接続を実現し,ワークロードやトラフィックに対するスケーラビリティを高めた。クラスタ接続でのダウンタイムをほぼゼロにまで抑えている。z900はリソースを自動調節できるのが特徴。従来は手動で設定するか,調節可能なパーティションが限られていた。自動復元機能も備えており,常時モニタリングを行ってエラーを自動検出する。

 「z900」の機能は以下の通り。

・16プロセサ構成で,2500MIPSを超える性能
クラスタ接続で,1日最大90億件のトランザクション処理が可能。スタンドアロン環境での処理性能は1日3億。S/390 G6は最大12プロセサ構成,公称1614MIPSだった。

・24Gビット/秒の入出力帯域
「帯域幅を競合ベンダの製品の3倍に引き上げた」(IBM社)。大容量のトランザクション処理に対応する。

・光入出力のFICON装備
テープ・ストレージ「Magstar」を「FICON」チャネルに対応させた。性能や共有機能を高めている。

・スケーラビリティ
1プロセサ構成から16プロセサ構成までに対応可能な高いスケーラビリティを備える。

・電子商取引向け高速SSL処理
2000件/秒のSSL(Secure Socket Layer)トランザクション処理を実行。

・HiperSocket技術
1台のz900の中の仮想サーバー間のTCP/IP接続を高速化する。

 IBM社は,z900のリリースに伴い,新しい顧客サービスの提供を始める。ユーザーはインターネットを介して同社の技術センターにアクセスすれば,自動監視/保守サービスを受けることができる。ハードウエアやソフトウエアの更新もできる。

[発表資料1へ発表資料2へ]

参考資料1へ](米IBMのAnnouncement Letter
「eServer Announcement Overview」)

参考資料2へ](米IBMのAnnouncement Letter「zSeries 900」=S/390 G6後継)
参考資料3へ](米IBMのAnnouncement Letter「iSeries 400」=旧AS/400)
参考資料4へ](米IBMのAnnouncement Letter「IBM z/OS」=OS/390後継)
参考資料5へ](米IBMのAnnouncement Letter「IBM Announces Workload License Charges」=ソフトウエアの新料金体系)
参考資料6へ](米IBMのAnnouncement Letter「z/VM V3R1 Enabled for 64-bit Architecture」)
参考資料7へ](米IBMのAnnouncement Letter「Software Enhancements to IBM AS/400 V4R5」)
参考資料8へ](米IBMのAnnouncement Letter「Preview: The IBM Enterprise Storage Server -- SAN Solutions for S/390」)
参考資料9へ](米IBMのAnnouncement Letter「IBM Storage Capacity on Demand」)