(2000.9.19,TechWeb News

 米上院本会議は米国時間9月19日に,中国に対する最恵国待遇(MFN)を恒久的に付与する法案を83対15の賛成多数で可決した。法案の成立によって米国は他国に適用している貿易条件を中国にも恒久的に認めることになる。中国はその見返りとして,自国の市場を米国に開放する。

 上院での法案可決は,昨年11月に行われた両国による協議で決められた条約を完成させることを意味する。また中国のWTO(世界貿易機関)への正式加盟への道筋をつけるものとなる。

 クリントン米大統領は,大統領任期の最終年の最重要課題としてこの法案に取り組んでおり,「通商関係正常化と中国のWTO参加が,同国の政治改革に影響を及ぼすことを期待している」と語った。また法案を巡って懸案だった,中国の人権政策,労働条件,大量破壊兵器の拡散行為などについては,「監視や経済制裁の勧告権限などを行使していく」方針を固めている。

 今年5月に下院本会議を通過して以来,製品の半数以上を輸出する米国ハイテク産業が上院における法案の可決に向けて積極的なロビー活動を行ってきた。法案の可決を受けて,「法案可決の真の勝利者は米国の労働者と消費者」と語るのはInformation Technology Industry Council会長のRhett Dawson氏。
 
 また,American Electronics AssociationやBusiness Software Alliance,Software & Information Industry Associationなどが加盟するThe U.S. High Tech Industry Coalition on Chinaは,「通商関係正常化の恩恵は一夜にして来ない」とし,即時的な効果は表れないとの見方を示した。

 しかし,同団体会長であり米Hewlett-Packardのinternational public policyディレクタのJim Whittaker氏は,「忍耐が適切な言葉だろう」としながらも,「恩恵は時間とともには米国経済の全分野に行き渡るだろう」としている。

 米国の対中国貿易赤字は巨額だが,同氏によると米国のソフトウエア業界は,毎年200億ドルの黒字を生み,ソフトウエア産業全体の売り上げの60%が米国外からもたらされるという。

 1998年に中国で利用されていた95%のビジネス・アプリケーション・ソフトは違法コピー。これによるソフトウエア産業の被害額は120億ドルにものぼる。しかし中国がWTOに加わることで,「中国は知的所有権に関するWTOの協定“Agreement on Trade Related Aspects of Intellectual Property (TRIPS)”に従うことになる」(同氏)。

 またWTOの加盟により,今年2000万人に達すると見込まれる中国のインターネット市場に米国企業が参入できるようになり,大きなチャンスが到来するという。

 「現在中国がIT製品にかけている平均13.3%の関税も,2005年にはゼロになる。これによりインターネット・インフラの整備が進み,またコンピュータの普及台数も増える。中国のパソコン市場は,世界平均の2倍の速度で拡大していく。その頃には世界第2位の市場になるだろう」(同氏)。

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