「無線インターネットへの関心が高まっているが,米国では加入者,海外からの旅行者ともに,そもそも携帯電話サービスの基本というべきサービス・エリアが十分でないことへの不満が大きい」。調査会社の米Yankee Groupが米国時間7月27日に,調査結果を発表した。

 それによると,米国では携帯電話ユーザーの67%が,「現在利用しているサービスよりも広いエリアをカバーするサービスがあれば,プロバイダの乗り換えを検討する」と回答した。    Yankee Groupは,米国市場での携帯電話サービスの普及度や利用率などを調査し,現状と課題をまとめた。比較したのは,日本,英国,ドイツ,フィンランドの4カ国。概要は以下の通り。

・広大な国土
 米国は国土が広大である上に,主要都市が国土全域に点在していることから,100平方マイルあたりの基地局が少ない。ドイツ35,英国20,日本9.4,フィンランド3.8に対し,米国では2.3。

・低い人口密度
 米国の人口密度は75人/1平方マイルで,英国やドイツの約1/9。しかし,フィンランドは米国の半分しかないにもかかわらず,1万人当たりの基地局数は米国の3倍もある。通信インフラにかけるコストに大きな差があることがわかる。

・低い都市化の水準と移動距離,ドーナツ化現象
 都市部や市街地に住む人口の割合は,ドイツ87%,日本78%,英国76%に対し,米国はわずか41%。また,都市のドーナツ化現象や米国人の車好きという側面もあり,米国の市民が1年間に移動する距離は平均1万4000マイルを超える。これは英国の2倍以上で,日本の5倍。こうした点から米国の携帯電話ユーザーが必要とするサービス・エリアを算出すると1330平方マイルで,日本の14倍,ドイツの5倍,英国およびフィンランドの3.5倍の広さとなる。

・市場のフラグメンテーション(細分化)
 米国では主要10社が合わせて8万以上の基地局を擁するが,事業者によりインタフェースが異なるため,ネットワーク間での相互運用性が確保されていない。このため,エリアによってサービスの状況がまちまちで,今後の展開によっては,状況が悪化する可能性もある。

 「一方で,プラス材料もある。最近の携帯電話サービス事業者間での合併の動きや,企業間での共同開発,ネットワーク間でのローミング提携,複数ネットワークに対応するサービスの勃興,スマート・アンテナやマルチ・モードといった技術などである。これらが,サービス・エリアの問題解消に一役買っている」(Yankee社アナリスト,Eugene Signorini氏)。

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