「MP3やMP3対応ソフトウエアは音楽業界を傷つけているとされる。しかしMP3ユーザは,その他の人に比べてより多くのCDを買ってくれるお得意さまでもある」。米Gartner Groupが米国時間7月27日に,「Is Napster Hurting Music Sales?」と題する報告書で明らかにしたもの。Gartner社が今年2月に4万世帯を対象に行った調査の結果である。

 6カ月の期間で見ると,MP3ユーザは非MP3ユーザに比べて,平均で3倍もCDを購入しているという。「CDを好んで購入する消費者は,ディジタル・コンテンツの配信を積極的に受け入れる層である。米国レコード協会(RIAA:Recording Industry Association of America)や音楽業界は,成長のためにMP3の利用を考える時期である」(Gartner社上級アナリストのSujata Ramnarayan氏)

 MP3ユーザの53%は,CDの購入や製品情報を得るためにインターネットをよく使っている。さらに彼らは,一般の人よりもお店でCDをよく買う人たちでもある。逆に,電話やインターネットでCDを購入する割合は低いという。

 MP3ユーザが,より多くのCDを購入する傾向があることについてRamnarayan氏は,以下のように分析する。「インターネットによって,ユーザは幅広い音楽コンテンツにアクセスできるようになった。CDを購入する前に試聴もできる。これがMP3ユーザがCDをより多く購入するという結果につながっている」。

 ちなみに米Jupiter Communicationsも同様の調査結果を発表している。「Napsterユーザは,音楽業界にとって敵ではない。むしろ音楽購入の意欲が強い」というもの。Napsterなど,インターネットを介して音楽コンテンツをシェアするソフトのユーザは,非ユーザに比べて音楽に費やすお金が45%も多いという。「音楽業界がNapsterやGnutellaをうまく取り込めれば,売り上げの増加が見込める。その利益は計り知れないほど大きい」(Jupiter社)。

 Napster社に関しては,米国レコード協会と米国音楽出版協会(NMPA:National Music Publishers Association)は米国時間6月12日に,Napsterをカリフォルニア州北地区連邦地方裁判所に提訴したが,26日にサービスの停止を命じる仮処分が出されている。

■MP3ユーザのCD購入パターン (%)

平均MP3ユーザ非MP3ユーザ
お店で購入506255
メール/電話で注文211924
インターネットを利用8308
インターネットで製品情報を取得124112
オンラインの顧客サービスを利用272
注:音楽を家で常に聞いている層を対象にしている
出典:Gartner

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