昨年末に“秘密のベール”を脱いだジンジャー(Ginger:商品名はSegway Human Transporter)。「評判が先走って,実体は大したことがなかった」との批判も何のその。熱心な支持者らの活動によって,普及へと弾みがついている。

 2月21日のAP通信によれば,米ニューハンプシャーやミネソタなど4州では,歩道でGingerを運転できるようにする法案が可決された。米国では歩道を動力車で走行することは禁じられており,それがGinger普及の大きな障害になると見られていた。

 今回4州で,あっさりとこの障害が取り除かれたが,今後,他の州にも同様の動きが広がりそうだ。というのはGingerの後援者たちが,他の30州でも同様の法案を可決すべく,熱心なロビー活動を展開しているからだ。

ニューハンプシャーに大工場,月産4万台体制へ

 昨年初頭に噂が広がり始めた当時から,発明家のDean KamenはGingerを引っ提げて,年間3000億ドルの売上げを誇る巨大自動車産業に挑戦すると言われた。冗談かと思われたが,彼は本気である。

 ベンチャー・キャピタルKleiner Perkins Caufield & Byersと投資銀行Credit Suisse First Bostonから総額7800万ドルの投資を得て,ニューハンプシャー州に1万平方メートルの大工場を建設。今年末までに月産4万台体制を整える。Kleiner PerkinsパートナーのJohn Doerrはいまだに,「(Gingerは)史上,最も早く10億ドル産業に成長する」という信念を捨てていない。

 商品が発表されてからも,Ginger人気は衰えを見せない。先週金曜日のAmazon.comオークションでは,発明家サイン入りの特注Gingerに対し,10万6000ドルという破格の入札があった。一般消費者向けのGingerは今年第4四半期に発売予定だが,その価格は約3000ドルと見られている。

 一方,今年第1四半期中には出荷予定の企業向け商品(予定価格8000ドル)には,既に多数の引き合いが来ている。U.S. Postal Service(米郵便局),General Electric,Amazon.comなどが導入をほぼ決定しており,サンフランシスコ国際空港,アトランタ市,Intel Corp.なども強い関心を示しているという。

 Time誌によれば,IntelのAndy GroveはGingerを試乗した後で,「バランス感覚の鈍い私でも,安全に運転できる。素晴らしい」と感動したという。

最高時速27キロ,本当に歩道を走りはじめたときが正念場

 当初の予想に反して,かなり速いペースで普及しそうなGingerだが,最大の問題は,本当にこれが歩道を走りはじめた時に生まれる。歩道を走るGingerは遅かれ早かれ,必ず歩行者に衝突する。

 最高時速17マイル(27キロ)は,決して遅いスピードではない。怪我人,下手すれば死者が出るかもしれない。わざわざGingerのために可決された新法案が裏目に出れば,その反作用も余計に大きい。これをどう乗り切るかが,本格的普及への試金石となるだろう。