米国のゲーム機商戦が秋の陣を迎える。11月15日にはマイクロソフトのXboxが,続く18日には任天堂のゲーム・キューブが発売され,先発のソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション2(PS2)も含めて,三つ巴の争いが始まる(ゲーム・キューブは日本では既に9月に発売されている。またXboxの日本での発売は来年2月22日の予定である)。

 とりあえず今年のクリスマス商戦を制するのは,PS2と見られている。発売から1年が経過し,ゲームの品揃えが充実してきたし,プログラマもPS2の性能を最大限に引き出せるようになったからだ。PS2はこれまで世界全体で2000万台を売上げ,前機種のPS1も合わせると8000万台近くが売られた。コンソール市場の60%を占め,抜群のシェアを誇っている。

Xboxは1台売るごとに100~125ドルの赤字?

 ゲーム機ビジネスの経験が全くないマイクロソフトは,PS2に対抗するため,圧倒的なパワーを持ったマシンを携えて参入する。Xboxは大きくて重い。お茶の間にデンと座ったVTR並の存在感がある(日本版商品はこれより小さくなる)。外見に相応しく中身も,733MHzのCPU,250MHzのグラフィクス・エンジン,64Mバイトのメモリーにハード・ディスクまで備えている。ミッド・レンジのパソコン並の性能を備えながら,価格はたった299ドルである。

 マイクロソフトはXboxを1台売るごとに,100~125ドルくらい,損を出すと言われている。Morgan StanleyのアナリストMary Meeker氏は,「収支がトントンになるのは2004年になる」と予想する。マイクロソフトはここまで既に,Xboxのマーケティングやプロモーションに5億ドルを費やしている。2005年までに同社は総額40億ドルを注ぎ込む予定と言われる。

 ゲーム機メーカーはハードで損を出しても,ソフトの売上げでそれを埋め合わせるのが定石である。PS2の価格もXboxと同じ299ドルだが,こちらも売れば売るほど赤字と言われる。

極端なソフト依存戦略に限界が見えてきた

 一般的にはゲーム・ソフト市場は今後も急成長すると言われている。それが正しければ,ソフトでハードを損失補填する戦略は,今しばらく通用するかもしれない。SoundView Technologyの調査によれば,2001年のゲーム・ソフトの売上げは米国で70億ドル,世界全体で170億ドルに達するという。この市場は今後も年率15%で伸び続け,2005年には世界で310億ドルに達する見込みという。

 しかし本当にそうなるだろうか。ゲーム先進国の日本では既に90年代終盤にゲーム・ソフト市場は頭打ちになり,以降,ずっと売上げは減少を続けている。日本市場の売上げは世界全体の約3分の1を占める。ここが急速に悪化すれば,それが世界全体に波及するのは,そう遠くない気がする。

 またゲーム機事体が「ゲーム機以上の何か」に変貌を遂げつつある今,やはりソフトに極度に依存するビジネスは無理が出て来るのではないだろうか。PS2もXboxも単なるゲーム機ではなく,次世代の家電商品のハブ(中核装置)となる。DVDドライブからインターネット接続機能まで備え,将来はビデオ・オン・デマンドで映画やテレビを見るためのセットトップ・ボックスを目指している。ゲーム機からの離脱を図る以上,ゲーム・ビジネスのゆがんだ商習慣も何時かは捨てねばならないだろう。

「総合IT商品」と「安いゲーム専用機」に分化が進む

 PS2やXboxとは対照的な戦略を取るのが,任天堂のゲーム・キューブだ。これは小さくて軽く,価格は200ドルと安い。任天堂は日本で,DVDドライブを追加した商品を4万円で発売したが,米国では今のところ売る予定はない。あまり本気ではないようだ。今後の情勢が自分達の予想とは違う方向に転んだ場合に備え,逃げ道を用意しておいた,という印象を受ける。任天堂は基本的に,ゲーム機を「単なるゲーム機」と見ている。

 多くのビデオゲーム・メーカーが,この3つのコンソールにすべて対応するソフトを開発している。仮に3つのゲーム機が共存するとすれば,ゲーム機市場は高級な総合IT商品と安いゲーム専用装置に分化して成長することになる。