携帯電話など,いわゆるモバイル端末(PDAやページャなどを含む)からインターネットを利用しているのは,消費者全体の15%----この数字を読者は,どう思われるだろうか?

 私は「もう15%にも達したのか」という印象を持ったが,iモードが普及した日本の消費者から見れば,「ええ?たった15%しかないの」という感じではないだろうか。不信を抱かれるのも,もっとも。これは日本の数字ではなく,世界全体の数字である。この調査は米Accenture(元Andersen Consulting)が,米国,英国,ドイツ,フィンランド,日本の5カ国で3189人の消費者を対象にして2月に,実施したものだ。

 日本だけを見ると,回答者全体の81%がモバイル端末からインターネットを利用している。他国を圧倒的に引き離してトップを走る。そのほとんどが,携帯電話からのネット利用者。日本の回答者全体の72%が,「携帯電話からインターネットを利用している」と回答した。これに関して他国の数字を見ると,米国が5%,英国が8%,ドイツが16%,フィンランドが6%である。

 米国が低いのは納得できるが,携帯電話の先進国フィンランドの数字が6%と低いのは,ちょっと意外だ。少なくともこの調査結果から判断する限り,モバイル・インターネット利用に関して,フィンランドは米国並みということになる。

 このほか日本では全体の95%が「主なインターネット・アクセス端末はパソコンである」と回答している。これに関して「携帯電話」と回答したのはわずか4%である。もっとも4%は他国と比べるとまだ高い。米国,英国,フィンランドの場合は0%である。ドイツがわずか1%だった。

 それではナゼ,モバイル端末(主に携帯電話)をインターネット・アクセスに使わないのだろうか?

 今回の調査では,それも聞いている。結果は国によって,大きく違いがある。米国の場合,「モバイル端末をインターネットなんかに使う必要はない(I don't need Internet access on the device)」という頭ごなしの回答が,61%に達しダントツだった(この場合,パーセンテージの分母(母集団)は「調査回答者全体」ではなく「モバイル端末をインターネット端末として利用しない」と回答した人の数である)。

 フィンランドも同じ答えが60%を占める。対照的に日本の場合は,そう答えた人は12%と低い。日本では「料金が高過ぎる」という回答が56%で,使わない理由のトップである。

 以上と似た質問だが,「モバイル端末からインターネットを使ううえで,障害となるものは何か」という設問もある。最大の障害として各国共通で指摘されたのは「画面を見るのが難しい」という点だった。この回答が米国では46%,日本では80%,フィンランドでは58%,ドイツでは66%,英国では56%に及ぶ。「データを入力するのが難し過ぎる」という回答も多数を占めた。日本で45%,フィンランドで38%,米国で39%を占める。

 「モバイル端末をインターネット端末として利用しています(=モバイル・インターネットを利用しています)」と答えた人に対し,「ではそれで買い物をしていますか」とも訊いている。これに対し,イエスと答えた人は米国が最も高く12%。フィンランドは5%,日本も7%と低い。いったん使い始めてしまえば,最も買い物をし易いのはやはり米国人である。

 同じくモバイル・ネット利用者に対し,「では,どんな用途に使っていますか」とも問いに対して,日本の場合「電子メール」が圧倒的に多い。全体の75%を占めた。これに対し米国では,「ニュースを見る」が最も多く,46%に達する。

 モバイル・インターネットの将来性はどうだろうか。「モバイル・インターネットはあなたにとって魅力的ですか」との質問には,米国では42%,フィンランドでは37%,日本では66%が「イエス」と回答している。これは要するに「今は使っていないが,将来もっと便利になって使いやすくなれば,使いたい」という意味だろう。

 最後になるが「どんなモバイル・サービスが魅力的ですか?」という問いに対しては,最も多い回答が「フライトの遅れやキャンセルを自動的に通報して欲しい」だった。米国では63%,日本では53%に達し,他国も似たような数字である。

 モバイル・インターネットの将来予測については,「2004年までにモバイル・ネット端末の台数は年間10億台を超える」(米Cahners In-Statの調査)と,極めて楽観的な予想が優勢だ。しかし消費者はけっこう覚めているということを,承知しておく必要があろう。

(小林 雅一=ジャーナリスト,ニューヨーク在住,masakobayashi@netzero.net

■著者紹介:(こばやし まさかず)小林 雅一 近影
1963年,群馬県生まれ。85年東京大学物理学科卒。同大大学院を経て,87年に総合電機メーカーに入社。その後,技術専門誌記者を経て,93年に米国留学。ボストン大学でマスコミの学位を取得後,ニューヨークで記者活動を再開。著書に「スーパー・スターがメディアから消える日----米国で見たIT革命の真実とは」(PHP研究所,2000年)がある。

◎関連記事
「携帯電話機事業は収益確保難しく,先行き厳しい」と米データクエスト
2000年Q2の携帯電話機出荷台数は9800万台,Dataquestの調査
無線ネット端末の出荷台数は2003年までに10億台,米Yankee Groupの調査
ネット対応携帯電話・PHSの利用実態,ホームページ利用は最も多いOLでも3%
「欧州企業の82%がモバイル利用を重視,ただし財布の紐は固い」とGartner