ハイテク株の多い米国の店頭株式市場(ナスダック)の総合指数は,12月10日に3600,翌週には3700を軽く突破し,今や3800に迫ろうかという勢いである。余りの上げ足の速さに,市場関係者の間では急速に警戒感が広まっている。

 市場の牽引役は,もちろんインターネット株。特にIPO(株式公開)を果たした企業だ。9日には米VA Linuxの株式が公募価格の約7倍,10日にはネット競売業者の米FreeMarketsが公募価格の4倍になるなど,異常とも言える値動きを示した。市場関係者の間には,「利益が出るか出ないか分からない企業の株価も急上昇しており,典型的なバブル相場の兆候を示している」と警鐘を鳴らす人も少なくない。

 これに先立ち,米国の投資関係者の間で広く読まれているRed Herring誌の創刊者が,「インターネット・バブルはクリスマス直後に弾ける」と予言し,市場関係者は警戒感を募らせている。同誌の創刊者・兼編集者のMichael/Tony Perkins兄弟が11月に出版した「Internet Bubble」(Harper Business刊)も話題を呼んでいる。

 インターネット株がバブル化しているのは,誰の目にも明らか。もし予言するなら,「それがいつ弾けるか」まで言い当ててくれないと意味がない。著書のなかでPerkins兄弟は,「インターネット株は(バブル崩壊後),平均で50%下落する。バブル崩壊の第1段階は,クリスマス商戦直後に訪れる」とズバリ予言した。

 Perkins兄弟がバブル崩壊予言の拠り所とするのが,インターネット企業がクリスマス商戦に注ぎ込んだ,テレビなどへの巨額の宣伝広告費だ。「ネット企業は今年の商戦に総額10億ドル以上の宣伝広告費を注ぎ込むと見られる。巨額の広告費に見合う成果を上げられなかった企業から,株価が下がり始め,それがバブル崩壊につながる」と見る。

 大胆な予言の信憑性はともかく,著書で紹介されている,米投資業界の舞台裏は注目に値する。インターネット・ベンチャーを育て上げた,数多くのベンチャー・キャピタリストが現在のバブルの真相を告白しているのだ。

 たとえばOak Investment PartnersのパートナであるBandel Carano氏は,「我々はいつからかベンチャーを育てることよりも,株価を育てることに熱中し始めた。その方が手っ取り早く儲かるからだ」と言い切る。Benchmark CapitalパートナーのBob Kagle氏は「我々は史上最大の投機過剰市場のまっただ中にある」と語る。つまりインターネット・ブームの影の立役者たちが,そのバブル性を自ら認めているのだ。

 インターネット・バブルの恐ろしさは,それが米国から欧州,さらに日本を始めとしたアジア諸国にも伝染しつつあることだ。12月17日のニューヨーク・タイムズによれば,南米ブラジルでもインターネット株が急騰しているという。このような状況下で,本家本元の米インターネット・バブルが弾けた場合に,ようやく立ち上がりつつある米国以外のインターネット産業への影響が危惧される。

(小林雅一=ジャーナリスト,ニューヨーク在住,masakobayashi@netzero.net