米ドット・コム企業の廃業やリストラが相次ぐなか,ベンチャー・キャピタル(VC)からの投資額は過去最高を記録していることがわかった。

 投資家向けニューズ・レター『Private Equity Analyst』によれば,2000年前半の6カ月間にVCファンドが調達した投資総額は252億ドルに達し,前年同期の3倍を記録した。このままいけば2000年通年の調達金額は,過去最高だった昨年の356億ドルを大きく上回るのは間違いない。

 ファンドの約3/4はネット関連である。すなわちVCファンドに集まる資金は,大量にネット関連企業へ流れている。要するにこの調査結果は,ネット関連企業への投資意欲が衰えていないどころか,むしろますます強まっていることを示唆しているのだ。

 その一方で,VCからの追加投資が受けられず,運営資金が底をついて,倒産や業務縮小を迫られるドット・コム企業が後を絶たない。以前に本コラムでも紹介したように,Drkoop,Peapod,Pets.comなど,バブル絶頂期にもてはやされたネット企業の多くは,株価が10ドル以下に下落して,存亡の淵をさまよっている。

 インターネット産業への投資金額は増えているのに,多くのドット・コム企業は金欠病で死にかけている。これは何を意味するのか?

 答えは簡単である。ごく一部の有望企業に,投資が集中し始めているのだ。4月のNASDAQ急落を受けて,shake-out(淘汰・選別)期に移行したインターネット産業だが,いよいよ明暗がクッキリ分かれてきたようだ。

 6月末に開催されたPC EXPOで基調講演に立ったAmazon.comのJeff Bazos氏は,その直前に流れた同社の危機説を真っ向から否定した。「某アナリストに『資金繰りが悪化している』と書かれたが,何を根拠にそんなことを言っているのか。うちには十分な資金が残っているし,追加投資も決まっているのに」とBazos氏は憤慨した。これは,あながち強がりではないのかもしれない。

 今後,Amazon.comを筆頭とする優良ネット企業は,仮に株価が低迷しても,VCからの2次,3次の追加投資が期待できる。追加投資で経営体質が強化され,本当に黒字を上げる日が来るかもしれない。人員削減に踏み切ると同時に,数多くのライバル企業が消え去ることで,高額のテレビCMをはじめとした,余分な宣伝広告を打つ必要がなくなるからだ。

 インターネット市場でのシェア拡大競争は,終末に近づいて来たようだ。採算度外視の陣取り合戦が終わりを告げ,今後は営業利益をあげるための本当の競争が始まる。

(小林雅一=ジャーナリスト,ニューヨーク在住,masakobayashi@netzero.net