<http://www.schneier.com/blog/archives/2004/10/...>
私は8月にこのコラムで,シドニー発ロサンゼルス行きの米United Airlinesの旅客機が飛行を中止してシドニーに引き返した事件を取り上げた(BOB on Board)。引き返す理由が馬鹿げていたのだ。客室乗務員が「BOB」と書かれた汚物袋をトイレで見つけたからだという(乗員たちはこのBOBを「Bomb On Board(爆弾を仕掛けた)」の意味だと考えたらしい)。
この記事に対し,読者からたくさんのメールを受け取った。そのほとんどは私の見解に賛同するものだが,なかには「United Airlines社は乗客を守るためにあらゆる手段をとるべきだった。引き返すという判断は適切だったし,慎重な行動だった」という意見もあった。
この事件の問題は,「疑い始めるときりがない」ことにある。読者とのメールのやり取りの中で,私は「オレンジ色のシャツを着ている乗客がいた場合,その旅客機は目的地を変更すべきかどうか」と質問した。オレンジは,米国土安全保障省(DHS)で高度警戒レベルを示す色なのだ。もしもあなたが「航空会社はどんなに小さな脅威であっても深刻に扱うべきだ」と考えるのなら,旅客機は目的を変更すべきだろう。
オレンジ色のシャツの例は非現実的だ。実際,非現実的な例として私が考えたものだ。もっと非現実的な例はほかにもある。残念ながら,以下の例は9月にミルウォーキーで起こった実話である。
既に出発ゲートを後にしていた米Midway Airlinesの旅客機の中で,ある乗客(記事では誰なのか触れていない)が備え付けの雑誌にアラビア文字が書かれているのを見つけた(訳注:記事によると,厳密には,イランやアフガニスタンなどで使われているアラビア文字を使うペルシア語が書かれていた。ファルシ語とも呼ぶ)。
これだけでパニックになるとは思えないが,飛行機はUターンしてゲートに戻った。全員が飛行機から下ろされ,身体検査を受けた。さらに,飛行機と荷物もすべて調べられた。“驚いた”ことに,結局何も見つからなかった。
乗客たちが離陸できたのは翌朝のことだった。
馬鹿げた話だ。テロは深刻な問題であるが,膨らまし過ぎた想像に毎回過剰反応していると,我々は自分たちの安全を確保できなくなる。勝手に作り上げたでたらめの脅威ではなく,本物の脅威に対して警告を発する必要がある。でたらめの脅威を警告しても,何の意味もない。
ニュース記事:<http://www.cnn.com/2004/TRAVEL/09/21/...>
(訳注:現在では上記記事にアクセスできない。同じ内容は,例えば次のURL<http://archives.californiaaviation.org/airport/...>で読める)
オリジナル記事(BOB on Board):<http://www.schneier.com/crypto-gram-0408.html#1>
Copyright (c) 2004 by Bruce Schneier.
◆オリジナル記事「Disrupting Air Travel with Arabic Writing」
◆「CRYPTO-GRAM October 15, 2004」
◆「CRYPTO-GRAM October 15, 2004」日本語訳ページ
◆「CRYPTO-GRAM」日本語訳のバックナンバー・ページ
◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテック コミュニケーションズと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。