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ITpro Security

[CRYPTO-GRAM日本語版]捜査令状が守るセキュリティ

勝村幸博 2004/06/03 ITpro

 かつて「捜査」とは,トレンチ・コート姿の刑事が尾行することだった。

 いまどきの刑事はコンピュータの前に座っていることが多くなり,捜査は電子化され,より安価に,より容易に,そしてより安全になった。しかしその分,乱用されやすくもなっている。捜査が安く簡単に行える世界では,捜査令状が警察に対抗するセキュリティを市民に与えてくれる。

 捜査令状は米国憲法の修正第4条で保証されており,警察が個人の家を捜索したり,電話を盗聴したりする際には事前に取得しておくよう規定されている。ただし,そのほかの捜査や調査に令状が必要かどうかは明確になっていない。

 先ごろ,ナッソー(Nassau)郡の裁判所が滅多にない重要な判例を出したそうだ。これは,一つの疑問に結論を出した。その疑問とは「警察が電子的な監視装置を誰かの車に装着する場合,令状は必要か?」というものだった。

 以前からずっと,警察による嫌疑者の尾行は可能であり,無線による追跡も可能になってから数十年になる。ただ,技術の利用が当時よりはるかに容易かつ安価になった点だけが変わった。

 捜査は今後も安く手軽になり,さらに目立たなくなる。ナッソー郡の事例では,警察は窃盗事件の嫌疑者であるRichard D. Lacey氏の車に追跡装置を密かに取り付けた。Lacey氏の逮捕後,弁護士は警察が装置の利用について令状を取得しなかったことと,Lacey氏のプライバシを侵害したことを理由に,追跡装置で集めた証拠の不採用を裁判所に求めた。

 この試みはニューヨーク州ではおそらく初めてのことで,米国全体でも数えるほどだろう。裁判官は木曜日に,警察は令状を取るべきだったとの判断を示した。ただし「追跡対象の自動車はLacey氏の妻のものなので,Lacey氏のプライバシは無関係」という理由で証拠の不採用は見送った。

 いまや我々は,いつも自動的に追跡されている社会に暮らしている。

 Lacey氏が乗っていた車に「OnStarシステム(訳注:GPSと連動し,事故などの非常時に自動車の場所を自動的に通知できるシステム)」が装備されていたら,それを使って追跡されていただろう。また,携帯電話機を持っていれば,誰でも追跡されうる。「E-ZPass(訳注:有料道路用の料金自動徴収システム。日本のETCと同様のもの)」はトンネルや橋を通過する車を記録する。監視カメラは我々を撮影している。買い物は銀行やクレジット・カード会社に,電話は電話会社に,インターネットの使用状況はWebサイトの運営者によって,それぞれ記録されている。

 米司法省は,こうした監視や記録はテロとの戦いに欠かせないと主張している。歳出予算案にこっそり入れられた条項により,米連邦捜査局(FBI)は銀行,保険会社,旅行会社,不動産会社,株式仲買人,米郵便公社,宝石屋,カジノ,自動車ディーラから,捜査令状無しで個人情報を入手できるようになる。

 2004年から米国政府は,世界中から訪れる旅行者を対象に,入国時の写真撮影と指紋採取を始めた(特定の27カ国からの旅行者は除く)。また,「CAPPS II(Computer Assisted Passenger Prescreening System II)」というシステムが,航空機の搭乗者全員について経歴調査を行うようになる。FBIはニューヨーク全域で,ラスベガスのホテルに宿泊したことのある26万人の氏名を集めた。いよいよ「ビッグ・ブラザーがあなたを見守っている」式の捜査が現実になりつつある。

 残念ながらこの種の問題に関する議論は,「安全を確保するにはどれだけ自分のプライバシをあきらめなければならないか」といった誤ったものになってしまう。「テロリストや犯罪者を捕まえるために,この新しい捜査技術を使うべきか,それともプライバシを尊重して使用を禁止すべきか」といった具合いだ。

 この質問は間違っている。新技術は警察などに新しい捜査技術をもたらし,既存の技術をより安く使いやすくする。警察がこれらを利用すると,我々みんなの安全が高まることも分かる。修正第4条は,警察が対象者の家やその人自身を調べるという,最もプライバシを侵害する捜査方法さえ既に許している。

 我々が必要とするのは,こうした捜査技術の乱用を防止する適切な仕組みだ。だから,「警察などが司法当局の監視無しに新技術を使うことを許すべきか,それとも監視下に置いて説明責任を負うよう求めるべきか」という質問こそが正しいのである。修正第4条は,既に令状の要求という形でこの質問に答えている。

 「技術的に中立な法の要請」である捜査令状は,基本的には警察が手紙の開封,電話の盗聴,キーワード検索のためのデータ・ストリームの盗聴を実行する前に,“中立で客観的な治安判事”が捜査の根拠を確認し,結果に対する責任を持つことになっている。ポイントは,独立した司法の監視下にあることだ。捜査令状に関する手順それ自体が,乱用から我々を守り,セキュリティを高めている。

 新技術や法の執行に関する議論においては,「セキュリティのために」と言いながら,実は「捜査機関に対する監視と説明責任を小さくすることでその力を強める」ことを目的としている発言が多々ある。そのような発言を鵜呑みにすることはとても危険であり,我々が住む社会のセキュリティを低下させることになる。令状を必要とする捜査技術が多くなるほど,セキュリティは向上するのだ。

Newsdayに掲載されたオリジナル記事:
http://www.newsday.com/news/opinion/...

Copyright (c) 2004 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Warrants as a Security Countermeasure」
「CRYPTO-GRAM May 15, 2004」
「CRYPTO-GRAM May 15, 2004」日本語訳ページ
「CRYPTO-GRAM」日本語訳のバックナンバー・ページ

◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
◆オリジナルの記事は,「Crypto-Gram Back Issues」でお読みいただけます。CRYPTO-GRAMの購読は「Crypto-Gram Newsletter」のページから申し込めます。
◆日本語訳のバックナンバーは「Crypto-Gram日本語訳」のページからお読みいただけます。





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