「リアルインタビュー」第3弾!
あのビジネス・パーソンが素顔と肉声で登場します。


 IT Proは,新しいインタビュー番組 「リアルインタビュー」をスタートさせました。IT関連分野の注目の キーパーソンを選定,その素顔に迫ります。
 豊かな表情をとらえた動画像, 発言の真意がくみとれる音声,細かなやり取りが分かるインタビュー全文 テキスト。これまでのインタビュー記事とは全く異なる新しい試みです。
 どうぞ,お楽しみください。


【 第3回 】フューチャーシステムコンサルティング・金丸社長,
起業経験からソフト技術者に告ぐ
(2002年6月7日公開)

 店頭公開から3年。いよいよ6月21日に東京証券取引所に上場することになったシステム開発会社がフューチャーシステムコンサルティングである。同社を設立したのが,今回のリアルインタビューのお相手,金丸恭文社長である。フューチャー設立までの経歴を尋ねると,現在の日本のIT産業に対する警鐘も飛び出してきた。インタビューの中で繰り返し語られるのは,「ソフト専門」「ネットワーク専門」といった狭い範囲に留まることなく,幅広い視点で顧客のニーズに応えることの重要性だった。大銀行の統合に伴うシステム障害などで,日本のIT産業の凋落が語られる昨今,ソフトウエア技術者はもちろん企業経営者にとっても、傾聴すべきメッセージが多い。
(聞き手は日経BP・編集委員,上里 譲)

※インタビュー全文(ノーカット・無修正版)は,こちら

かねまる やすふみ 氏
1954年生まれ。神戸大学工学部卒業後,79年TKCに入社。82年ロジック・システムズ・インターナショナル。85年にはNTT PCコミュニケーションズ,88年にはインフォネクスの取締役にそれぞれ就任。89年11月,フューチャーシステムコンサルティングを設立し,代表取締役社長に就く。10年後の99年にはさらにフューチャーフィナンシャルストラテジーを設立,代表取締役会長となる。


選択
なぜTKCに就職したのか?

 金丸氏が率いるフューチャーシステムコンサルティングは,同氏が自ら起こしたシステム開発会社である。金丸氏が起業したのは1989年,35歳のこと。大学を卒業してから会社を設立するまで,金丸氏は何をしてきたのか,会社設立に至る経緯を聞いてみよう。まず,金丸氏は大学卒業後,会計事務所などに向けた情報処理サービス会社であるTKCに就職した。なぜ,TKCを就職先として選んだのか? その選択理由にも金丸氏らしい先見性に富んだ合理的な考え方を垣間見ることができる。

革新性
実績ベースではイノベーションは起きない

 金丸氏は82年にはロジック・システムズ・インターナショナルというベンチャー企業に転職する。そこで,85年にセブン-イレブン・ジャパンを顧客として獲得する。金丸氏の名をIT業界に知らしめるビジネスのスタートである。そこでは,まず「ドアを開けてもらうまでに,かなりの時間がかかった」という。他社にも営業活動を仕掛けていた金丸氏には,「実績ベースでしか動こうとしない大企業の硬直した姿」が見えてきた。実績を問うというのは,どういうことか。この変化の激しい時代に実績だけでITパートナーを評価していないか。そう自問させられる話が続く。



苦闘
こういうお客様に鍛えられた

 セブン-イレブンの仕事に取り組んだ金丸チームには過酷な要求が待ち受けていた。「自分たちは24時間365日オープンしているのだから,今日言ったことは明日ぐらいには何とかしろ」といったたぐいである。そして極めつけのエピソードが披露される。今だからこそ,明るく笑って語れる苦労話だ。こうした試練を乗り越えてきた金丸氏だからこそ,今のフューチャーがあるのか。



姿勢
サラリーマンだと思って仕事をしなかった

 上司からの指示で仕事をこなし,会社から給与をもらうのが雇われ人,つまりサラリーマンである。しかし,金丸氏は社長になる前も「サラリーマンだと思って仕事をしなかった」と言い切る。そこには顧客の立場に立って考えるという金丸氏のスタンスが凝縮されている。こういう考え方をする人だからこそ,ベンチャーを起こし,成功することができたのか。



思い入れ
会社設立が1989年11月28日の訳

 金丸氏は31歳にしてNTT PCコミュニケーションズの取締役に就任する。3年後にもロジック・システムズ・インターナショナルとNTT,トヨタ自動車でジョイント・ベンチャーを立ち上げ取締役になる。88年のことだ。その後,いよいよ独立して自分の会社を起こそうとするが,社長と会長に宿題を出され,すぐには独立させてくれない。昭和天皇崩御,ベルリンの壁崩壊と歴史の歯車が大きく回った89年,金丸氏は独立の最終決断を下す。設立日は11月28日に決められた。なぜ,この日なのか。合理性だけで活動しているかに見える金丸氏だが,個人的な思い入れでモチベーションを高めて突っ走った姿に人間性が感じられる。



憂い
全体設計ができる人がいない今の日本IT業界

 フューチャーを起業し,その後も数々のシステム開発を手がけてきた金丸氏は日本のIT業界の現状を憂う。本来のシステム・インテグレーションは,全体設計をしなくてはいけないという。耳の痛いシステム・インテグレータもいるかもしれない。

警鐘
プログラミング軽視のツケ

 日本のIT業界に対する金丸氏の警鐘は続く。顧客と向き合う人は,実際にプログラムを書くのではなく,下請けの下請けに発注しているようなありさまである。たたき上げの金丸氏には,開発経験のない人が顧客と対応しても,顧客のニーズに応えていないと映る。それが日本のIT産業の地盤低下につながっているのではないかと危機感を募らせる。自ら顧客を開拓し,システムを開発してきた金丸氏の発言だけに説得がある。

人材
T字型人間でないと付加価値が低い

 このようなIT業界の現状で,どのような人材が求められるのかを金丸氏に語ってもらった。これまでの金丸氏のメッセージから推測がつくように,専門に閉じこもった人材ではなく,専門プラス幅広い視野をもった人材ということになる。これからIT技術者になろうという人,すでにIT技術者である人はこの人材論をどのように受け止めるだろうか。

職人魂
一行のプログラミングにもこだわりを持つ

 セブン-イレブンで店舗システムのハード開発まで手がけた独自の視点から、ソフト開発の心構えを語る。ソフトを開発してもハードに組み込まれたら,ハードの一部になってしまう。ソフトにバグは付き物という“開き直り”は許されないのだ。ハードの回路図のようにソフトを考えるという発想も,おもしろい。


今こそ腕に覚えのある人が起業すべき

 締めくくりに金丸氏から若手のソフト技術者たちへのメッセージを聞いてみよう。これまでのメッセージを踏まえて説くのは,やはり幅広い領域に目を向けるということである。それはお金の面も含むのだ。こうした金丸氏からのメッセージをあなたはどう受け止めるだろうか? ご感想は下の「Feed Back!コーナー」にお寄せ下さい。


  撮影・編集協力:サークリット

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