【 第3回 】フューチャーシステムコンサルティング・金丸社長,

起業経験からソフト技術者に告ぐ


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大きい「プログラミング軽視のツケ」

金丸 そうすると,今は,例えばUNIXサーバーとPCサーバーが使われて,ネットワークが例えばWANとLANの組み合わせであって,ルーターと交換機も登場するかもしれませんよと。アプリケーションの実装については,クライアント/サーバーではビジネス・ロジックが全部サーバー側に移って。そうすると,一見,画面上で見えている機能の実現は,全部サーバー側でやるというようなケースがあったり。そうすると,今のような話でいうと,非常にトータルな知識を要求されるわけですね。お客様は全体で購入するわけですから,ハードウエアだけ買ったわけでもないし,アプリケーションだけ買ったわけでもないし,パッケージだけ買ったわけでもなくて,そういう全体責任ですよね。

 さっき申し上げたプログラミング軽視のツケというのは大きくて,ユーザー部門もシステム部門もプログラミングをやってない。技術が新しく変わったわけで,例えばJavaだとかC++という世界になってきたときに,自分でもコーディングをある程度してみた後なら,次に外部の人に発注してもマネジメントできるかもしれませんけれども,やったことがないのに分かったふりしてやるわけでしょう。請け負ったシステム・インテグレータと言われる人たちが,また分かったふりをして,勉強もしてないのに,またさらに下請けに出す。それで,本当に分かっている人は本当に仕事をしている人で,そういう方々はエンドユーザーとは会わないわけですよね。今やその一番手を動かしてやるところを,インドとか中国に頼もうと言っているわけで。そうすると,ソフトウエア産業以外の日本の製造業は,今まで実装という世界で先進国を抜いてきたのに,自分がそういう人たちと同じような行為をして,すぐアジアの知恵者たちに負けていくわけですよ。ずっとこの繰り返しで。

 だから,このままIT産業というのは,全体としては顧客の要求にこたえられない人たちの数の割合のほうがどんどん増えていって。そういう意味では,今市場を支配している人たちというのは,どんどん落ちていくと思うんですよ。だから,私は総合コンピュータ・メーカーさんにいらっしゃるエンジニアたちは,もうそんなところにいるべきではなくて,10人ぐらいの単位で出てきて,そういう人たちがフューチャーみたいな会社を作って,それが100とか200ぐらいになってきて,そういう中で我々も競争するんだったらいいんですけど。そういう人たちの数が少なすぎるんですよ。ですから,やりやすいといえば,やりやすいですけどね。

 システム・インテグレータは組織として全体的なソリューションを提供しようとしているわけですが,やはりトータルな設計ができる個人が必要だと。

金丸 そうですね。

 フューチャーには,そういう人材がいると。

金丸 そういう人を養成しているわけですよね。

 社員全員をそういうふうにしようということでしょうか。

金丸 社員全員をそういうふうにしようと。というのは,もうこれからの時代というか,今の時代もそうですが,ネットワークだけやっていても,そのネットワークというのはアプリケーションと組み合わせで使われるものですから,その人がネットワークだけしか関心がなかったら十分ではありません。業務アプリケーションに関心がないネットワーク・エンジニアは,全体を考える人よりは付加価値が低いんですよ。そうすると,よく「T字型人間」といいますけど,1つのスペシャリティと,あと横断的なスキルというのは,これから常識じゃないといけないんですね。

想像力豊かなT字型エンジニアを育てる

 自分のネットワークを通過するそのレスポンス・タイムだけに自分が責任を果たすというのではダメです。そうすると,あるときにトラフィックが集中して起きるトラブルに対応できない。例えば,みずほさんのああいう振替処理だとか,センターカット処理の場合,処理の性格,それからゴールデンウィークの前とか,あるいは3月末というのは日本社会がどういうことになるか,お客様から言われなくても想像できるような人じゃない限り,「これからは役に立たない」とは言わないけれども,そういう人よりは,顧客はトータルな視野のある人を求めるんじゃないかなと。

 T字型人間が重要だというのは分かりますが,実際のシステム開発・運用の局面では,要素技術のスペシャリストが活躍するのではないでしょうか。

金丸 そうですね。

 そのとき,要素技術のスペシャリストは社外に求めるのでしょうか。

金丸 いや,今でも要素技術というのは,例えばハードウエア・ベンダーさんであるとか,ソフトウエア・ベンダーさんがいらっしゃって,もちろん製品提供者として我々に提供していただかなきゃいけない技術情報というのがあるんですけれども,それは多分そのベンダーさんはどなたでも提供されていらっしゃいますから,それを最低限いただきさえすれば,それ以外のものというのは,全部我々の社内ですね。

 それはT字型の人がやるわけです。要素技術の詳細のところ,実装のところですが。

金丸 それはT型人間の中で,例えば,リレーショナル・データベースに非常に詳しい人,それからネットワークに一番詳しい人というふうに・・・。Tの専門分野は自分の選択で,これならだれにも負けないという道を探さなきゃいけないですよね。

 各プロジェクトごとに最適なチームを組むのは,すごく難しそうですね。

金丸 それはそうですね。

 そういう組み合わせでチームを組めないことが往々にしてあるから・・・。

金丸 ええ。

 それはどうするんですか。

金丸 それは,さらに横断的組織を作って,フロントのプロジェクトに出ていかないんだけれども,出ていった人の足りない分を補強する部隊というのを別に作っているんですよ。

 それはT字型の人じゃないですよね。

金丸 T字型の人じゃないんだけど・・・。さっきのT字型というのは,例えば,技術分野のT字型というのもあるわけですね。例えば,データベースとネットワークとユーザー・インタフェースでいうと,「今はユーザー・インタフェースにむちゃくちゃ詳しいけれども,当然ながらデータベースもネットワークもすでに経験があるよ」というTの人でないと,サポートできないんですね。

 そうでしょうね。そうなると,今までお客さんとして優良企業をリストアップされていますけれども,全部のお客さんに満足してもらうというのはなかなか難しいですね。

金丸 難しいですよ。「道中,山あり谷あり,谷底あり」じゃないですか。

 難しいことのひとつとして,本来はお客さんが考えるべきことまでT字型のプロジェクト・マネジャーにコンサルティングを依頼する局面が多くないですか。

金丸 ありますね。

 それから,システムを最終的に納品するときに,社内でコミュニケーションが十分とれずに品質を保てないケースも考えられます。これらの課題に対して,金丸さんはどのように考えていらっしゃいますか。

金丸 まず,プロジェクトがスタートするときに,その位置づけをお客様の経営トップと共有できないとダメです。それから,日本企業は世界2位ぐらいのお金を使ってきたと思うんですけれども,いつも成功する企業は同じ成功事例が少ない。そうすると,「成功事例はなかなか手に入りづらいもの」ということをよく考えていただきたいのです。我々が行く前に,情報システム部門がいて,情報システムを提供する既存のベンダーさんがいらっしゃるわけですね。そこで満足していれば,我々に頼まないわけですよ。ですから,「何十年とやってこられて,その満足度が低い」ということはよく認識をしていただいて。そうすると,そこに対して新たなITを通じて業務改革まで成し遂げたいというご要求ですから,相当な覚悟といいますか,経営トップのコミットメントとバックアップが継続してないとダメですよと。