【 第2回 】 松井証券・松井社長,ネット証券を強烈に説く

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自由を守るには,開き直れ

 座右の銘は何でしょうか。

松井 「座右の銘がない」のが座右の銘ですね。ちょっと傲慢に聞こえるかもしれないけど,いろんな偉人たちは彼らなりにいろんな意味があって,ある言葉を発したんですが,それはシチュエーションというか環境が全部違うわけです。その人にとっては意味ある言葉だろうけれども,自分にとっては関係ないですよね。だから,人の生き方を参考にしないなんて傲慢なことを言うつもりはないけれども,やっぱり自分の人生だったら自分の頭で考えて行動すべきだろうと。もし座右の銘があるんだったら,それは自分で,おれの信念はこうだということで,いつになるか知らないけれども,座右の銘を自分で作りたいですね。人様が言っている言葉じゃなくて。

 それはまだ未公表ということですか。

松井 いや,座右の銘は何ですかと聞かれるから,「自分で考える」というくだらない,ありきたりの何の意味もないような言葉が,ある意味では座右の銘かなと。「自分の頭で考える」ということですね。

 自分で考えるというのは難しいことですね。先ほどシチュエーションというお話がありましたが,自分で考えるためにはどういうシチュエーションに自分を置いたらいいか,という問題もあると思うのですが。

松井 もちろんありますね。だから,いろんなしがらみがありますし,年をとるにつれて,「どうしても逃れ切れないしがらみがどんどん増えていって,がんじがらめになって・・・」ということでしょうけれども,自分で考えるという前提となるスタンスとして重要なのは,やっぱり「フリー」ということですね。自由というのは人間が一番大事にしなくちゃいけないことだと。

 自由というのは,とても深い意味があるんでしょうけれども,自由はそんなに簡単に獲得できませんよね。自由を獲得するために人間は生きているんだと。ある面ではね。だから,自由を失って何で人間なんだ。奴隷じゃないか,そんなものは。奴隷になってどうするんだ,犬猫と同じじゃないかと。非常に生意気なことを言わせてもらえれば,自由はすべてだと。「自由は死をもって守るべし」という気持ちで行動しているつもりですけどね。

 大きい組織に属しているビジネス・パーソンが多いわけですが,そういう人たちが精神的な自由を獲得する方法はあると思いますか。

松井 あると思いますね。

 具体的に何かアドバイスをお願いします。

松井 皆さん,薄々気がついていると思いますけど,組織は絶対に「従」なんですよね。「主」じゃないんです。人間が作るんですから,組織というのは。組織がひとり歩きして一体どれだけ個人というのが束縛されて,自由を失って,がんじがらめになって,ということをみんな見ているでしょう。ある意味では会社の経営者なんていうのは「組織の犬」ですよね,ある面では。だって,死ぬときに社葬なんてね。「おまえら,よくも恥ずかしくもなく社葬なんてやるな」と。

 もちろんそれはいろんなシチュエーションがあるから,自分で会社を作ってというのは,それはそれでいいですよ。でも,「サラリーマン社長で何で社葬なんだよ」と思いませんか。そういう意味では,「何でそんな奴隷として甘んじているのか」と。自分たちが目指すあの経営者というのは,どれほど哀れな人たちか。それを見たら,「自分はそうなりたくないな」と思うでしょう。組織は自分で作るんだと。もしそれでもって相いれなかったら,なかなか難しいかもしれないけど,その組織を変えるか,あるいは壊すかできなかったら,そこから逃げるか。こういうことをしていいんじゃないかな,と。

 組織は絶対に個人を守ってくれません,最後は。組織の論理でひとり歩きしますから。そんな例は山ほど見ているじゃないですか。だから,ちょうど時代の変わり目に当たって,やっぱり個を中心にした発想というものをしなかったら,どうも救われないなと。そういうことをやっぱりみんな認識すべきじゃないかなと思いますね。

 そのような問題意識はみんな持っているとすると,今の組織ではうまくいかないケースが多くて,飛び出すと・・・。

松井 そうですね。だから,もちろん現実がもっとシビアなのは当然ですけど,でも一方で,実はその場にとどまっていたら何とかなるわけでもない。むしろ死ぬ確率のほうがずっと高いよと。ちょっと昔だったら,ずっとそこでこらえていけば,いくら奴隷でも,それなりの生活ができた。でも,こういう時代ですから,自分はそういう運命なんだと。この時代を背景にして生きているという意味でね。だから,もうその辺は開き直って,おれが主体的にそれをぶっ壊してやるとか,変えてやるとか,もしクーデターが失敗したんだったら,殺されるわけじゃないんだから,外へ出て何かやるかと。どっちみち,そこにいても死ぬんだから。こういうような開き直りというのは,多かれ少なかれやっぱり必要なんじゃないですか。

 キーワードは「開き直り」ですかね。

松井 ええ。もちろん大変なのは,分かっているんです。けれども,こういう時代なんだから,それはしょうがないじゃないですか。