「リアルインタビュー」開幕!!
あのビジネス・パーソンが素顔と肉声で登場します。


 IT Proは,新しいインタビュー番組 「リアルインタビュー」をスタートさせました。IT関連分野の注目の キーパーソンを選定,その素顔に迫ります。
 豊かな表情をとらえた動画像, 発言の真意がくみとれる音声,細かなやり取りが分かるインタビュー全文 テキスト。これまでのインタビュー記事とは全く異なる新しい試みです。
 どうぞ,お楽しみください。


※ この番組をご覧になったあなたの声をお聞かせください! アンケート実施中です。詳しくはこのページの最後に。

【 第1回 】 マネックス証券・松本社長,大いに語る
(2002年5月20日公開)

起業から3年。マネックス証券の松本大氏が3年間を振り返り,将来を語った。
赤字が拡大するも,ネット証券で旧体制に挑戦するため,自らのビジョンを貫く。
淘汰が進むネット証券業界では合併の流れは必然であり,IT投資の面からも企業統合のスケールメリットは大きいと指摘。DLJディレクトSFG証券との合併に意欲をのぞかせた。
1日のほとんどを仕事に費やすが,「雑誌大好き人間」「駅前サウナが究極の安らぎ法」と意外な面を見せる。
(聞き手は日経BP・編集委員,上里 譲)

※インタビュー全文(ノーカット・無修正版)は,こちら

まつもと おおき 氏
1963年12月19日生まれ。87年3月東京大学法学部を卒業後,ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社に入社(債券部)。90年4月ゴールドマン・サックス証券会社(債券部)に転身。92年5月ゴールドマン・サックス証券会社ヴァイス・プレジデント,94年11月ゴールドマン・サックス・グループL.P.のゼネラル・パートナーを経て,99年4月にマネックスを設立。99年6月にマネックス証券株式会社の代表取締役社長に就任し,現在に至る。


起業を振り返る
最も苦しい「旧体制への挑戦」


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 3年前に前職のゴールドマン・サックス(米大手証券会社)の要職を退いてマネックス証券を起業しましたが,なぜ進路変更の道を選んだのですか。

松本社長(以下,敬称略) 起業するというのは私の基本的な考え方ではなくて,興味がなかったんですが,当時の状況を考えるとオンラインとか,個人とか,株といったことが,すごく気になってました。「今だれかがオンライン証券を始めるべきだ」という気持ちが強かった。もともとゴールドマン・サックスに対して,「それを一緒にやりましょう」というふうに提案したんですけれども,ゴールドマン・サックスは「機関投資家しか相手にしないという理由からできない」ということでした。ですから,「大学ではどうしても理系に行きたかったんだけれども,その学校には文系しかなかった」(笑)みたいな,そんな感じで辞めざるを得なかったという感じなんですけど。

 ネット証券取引が大きなマーケットになるという確信はあったのですか。

松本 確信はありましたね。でも,そう思ったらたまたま本当にそうなったのか,ちゃんとした理由があると思ってそうなったのかというのは,結果論なので,はっきりはわかりません。

 この3年間で最も苦しかったことは何ですか。

松本 最初の半年から1年は本当に苦しかった。会社を立ち上げることはもちろん大変なことで,徹夜も続きました。当初はシステムのトラブルもあって苦しかった。けれども,それらは一番苦しかったことでは多分ない。今でも引き続き大変だと思うのは,旧体制への挑戦です。つまりアンシャンレジーム(旧体制を意味するフランス語)に対する挑戦を我々はしているわけであって,それがこの仕事をしていて一番苦しいことだと思います。

 旧体制とは具体的には何でしょうか。古い制度ですか。

松本 制度もそうですし,旧態依然とした金融機関もたくさんあるわけです。メディアも一方で旧体制に対する批判をしながら,必ずしも全体として新しいものを押し出そうというふうにしていないと思います。政府も含めて「やっぱり旧体制が先にありきなのか」という感じです。

マネックスの強み
顧客の声をきちんと聞く


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 マネックス証券は口座数を見ると約20万口座と,ネット証券で最大級ですね。この成長要因をご自身で評価してください。

松本 新しい需要を作りながら30万口座を開拓することは難しい,不可能に近いと思います。そうではなくて,新しいマーケットが必然的に生まれたのであって,そこに我々がビジネスモデルを近づけたのです。もし成長要因があるとしたら,それはお客様の声,つまりマーケットの声をちゃんと聞けたことだと思います。

 口座数だけ多くても実がないという指摘がありますが,松本さんは口座数のことはあまり気にしませんか。

松本 いや,気にしますね。それはお客様の声をちゃんと聞いたということですから。例えば,我々の場合には「オリエンテーションコミティー」という仕組みを持っていて,毎四半期に1回,お客様20人に集まっていただいて,3~4時間けんけんがくがくで話を聞く機会を作っています。ほかの証券会社に比べて踏み込んだ形でお客様の声を聞こうとしているので,お客様から毎日400通くらい寄せられるメールにも全通に目を通しています。

 それ以外の要因はなんでしょうか。

松本 ブランドでしょうね。マネックスという何かしらのブランドが,だんだんできつつある。その力が口座を増やしてこられた原動力だと思います。当初はもちろん,筆頭株主であるソニーのブランドが原動力の大半を占めていたのは確かですが,だんだんマネックス個体としてのブランドを作ってこれたと思うんですよ。

 マネックス証券は赤字が拡大しています。それは当初から予想していたことですか。

松本 いや,当初予想ではもっと良いはずだったんですが,やはりマーケットがここまで冷えるとは思わなかったわけです。逆に言うと,マーケットというのはそういうものであるので,良いときもあれば悪いときもある。ですから,別に動じてもいないし,こんなものだと思うんですよね。ただ,マーケットにおけるシェアとか,認知度とかは,振れはそんなに大きくなくて,明確な戦略を持って着実な努力をしていけば伸ばすことが可能なものです。そういったことに関しては,しっかりできてきたと考えています。。最終的な結果はマーケットの影響も大きく受けるので,それは致し方ないと思っていますけど。



IT戦略を明かす
合併のコスト効果,大きい


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 IT投資に対する考え方を聞かせてください。システムは,やはりアウトソーシングでしょうか。

松本 それはケース・バイ・ケースだと思います。一般的には,IT,とくにインターネットは,電話や自動車の発明と同じような類の大きな革命だと思うんです。ということは,それによって出現した道具は,専門家が担うんじゃなくて,極めて一般化する。そう考えると,ITやインターネットも,だれかに任せてASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)的に使うよりも,自分たちでしっかり作ったり使ったりしていくほうが自然だと思います。そのほうが自分の経営戦略に沿ったシステムができるでしょう。

 マネックス証券はセゾン証券と合併しましたし,今はDLJディレクトSFG証券との合併を検討していますね。合併にともなうシステム統合が経営コストに与える影響をどう考えていますか。

松本 我々の仕事は装置産業なので,システムに関するスケールメリットはすごく大きいと思うんですね。わかりやすい例を挙げましょう。100の金融サービスを提供しようとします。このとき,100のキャパシティ(性能や容量)のサーバーが何台必要かというと,コンティンジェンシープラン(万が一のときに確実にサービスを提供し続けられること)を考えると,2台必要なわけですよ。100のキャパシティのサーバーを2台,50%ずつ使っていると,100のサービスが提供できて,1台が倒れても,もう一方で100を稼動させればサービスを続けられるわけです。今度は,200のサービスを提供するにはどうしたらいいか。100のキャパシティのサーバーが3台必要で,それぞれ3分の2(67%)ずつ稼働させると全体で200のサービスが可能になる。1台倒れても,残りの2台を100にすると合計で200できる。つまり,100には2台必要なのに,200には4台ではなく,3台でいいわけですよ。ということは,100のサービスを提供している会社が2社くっつくと,サーバーはそれぞれ2台ずつあるんですけど,4台は必要ないわけで,3台でいいと。1台除却しなきゃいけないんですが,除却した後は将来に向けてのコストは4分の3になる。これはあくまでも,イメージ的にわかりやすい例を使った話ですが,合併などに伴うシステムに関するコスト削減のメリットは極めて大きいことが理解できます。



意外な生活パターン
朝は永谷園のお茶漬け


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 松本さんご自身は,ネット証券という新しい分野に飛び込んでから今日まで,人脈をどうやって作り,それをどうやって広げてきましたか。

松本 特に心がけていることはないんですけど,年齢でいうと30歳から70歳ぐらいまでのゾーンで,民間では金融だけでなくITや通信の分野でも知人は多いですし,政府系も含めて幅広い人脈ではあります。

 それは前職のゴールドマン・サックスのときに培われたものですか。

松本 いや,違うんですね。ゴールドマンのときには余りそういうお付き合いというのはなくて,マネックスを作り始めてからお付き合いがすごく広がったんですけど。特別に心がけていることはないんですけれども,「自分は自分以上でもないし,自分以下でもない。背伸びもしないけれども,変に萎縮もしない」というふうにしか付き合いようがないと思うんです。当然ですが,それが意外と難しんですけどね。

 1日の時間の使い方は,どんな感じですか。

松本 毎朝,6時か6時半に起きて,メールなどをチェックして,それからお茶漬けを食べます。永谷園のさけ茶漬けなんですけど,簡単なんで。それから,8時から8時半の間に会社に着いて,それからほとんど一息入れる暇もないぐらいずっと仕事が続くんです。お昼は10回中9回以上はデスクで,そばや弁当を食べながらパソコンに向かいます。それから,社外の人に来てもらってミーティングなどをやると,全く一息もつけずに夕方になり,慌てて「つぶやき」(マネックスが顧客向けに配信するメールマガジンで松本社長が毎日執筆しているエッセイ)を書き,それが書き終わると,社外の人と会いに出かけるんですよね。ディナーをしながらのミーティングは毎日です。家に帰ると12時ごろですから,それからまたメールを見て,結局,寝るのが2時で,また6時に起きると。



私生活を話す
雑誌大好き人間


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 オフタイムの過ごし方を教えて下さい。

松本 土日も,どちらかには仕事が入るんですが,休みがあると寝ていますね。一番好きなのは,駅前のサウナに行くことでして。これが,最高ですね。余りきれいじゃないんです。何となく雑としていて。サウナに入って,マッサージをしてもらって,休憩室でおじさんたちが浴衣みたいなのを着てビールとか飲んでいたりして。静かではないんですよ,テレビがついていて。そこの寝椅子で寝ると熟睡できるんですよ。適度な雑音が心地よくて。それが私にとって究極の贅沢な安らぎですね。

 本は読みますか。

松本 単行本はめったに読まないんです。雑誌は大好きで,見出しだけをチェックするのが一番好きです。雑誌の多い本屋さんへ行ってバーッと見るんですけどね。中吊りとか新聞の下のほうのもよく見ますね。ポスト,現代,新潮,文春のうち毎週,2冊ぐらい目を通します。書籍を読むとしたら,古今和歌集のような古典,小説なら谷崎潤一郎や永井荷風が好きですね。いわゆるビジネス書は生まれてこの方,読んだことがないですね。エコノミストが書いたものは基本的には余り当てにならないと思っています。ただ,ビジネスマンが書いたものは経験に基づいていて勉強になりますが,一番読みたい失敗談を書くビジネスマンはほとんどいませんよね。

 好きな言葉は何でしょうか。

松本 性格が適当なので,「成せば成る」と「成るようにしか成らない」のどちらか都合の良いほうをその時々で座右の銘にしてしまっている感じです。



若者へのメッセージ
好球は必ず来る


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 若手のビジネスパーソンたちに,先輩の松本社長から何かメッセージがあれば,お聞かせ下さい。

松本 自らの力の向上に関して努力していなかったら論外だと思いますが,多くの人は「自分にチャンスが巡ってこない」とか,「あの人のほうがいい部署にいる」とか,「先輩のほうがいい時代だった」とか,「自分のところには良い球が飛んでこない」と思いがちです。そんなときに,やる気を失ったり,必死に努力するのを止めてしまったりしがちですね。私が思うには,野球みたいなもので,好球は必ず来ると。それに備えて,常に素振りをしっかりやっていれば,好球が来たときにちゃんと打ち返せる。そういう考え方をするといいんじゃないかと思いますけど。


  撮影:仁科 保司  編集協力:小松 崇

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