グリッドのためのOracle 10gで自動化機能を充実

図4●エンタープライズ・グリッドのコンセプトを実現する新機能
図4●エンタープライズ・グリッドのコンセプトを実現する新機能
Oracle 10gではエンタープライズ・グリッドを実現するための3つのコンセプトを基に新機能が実装されている
 Oracle 10gは,[1]Oracle Database 10g,[2]Oracle Application Server 10g,[3]Oracle Enterprise Manager 10gで構成し,「リソースのプーリング」「すべてのレイヤーの仮想化」,そして「ポリシー・ベースによるロード・バランシングの自動化」を実現する。さらに,数百台つながるデバイスの管理作業を省力化するために,様々な機能を自動化している(図4[拡大表示])。

 Oracle Database 10gでは,管理コストを50%削減するためにデータベース自身が自分を監視し設定変更を行う。SQL文やメモリーのチューニング,索引のメンテナンス,断片化解消やセグメント収縮,自動バックアップ・リカバリ,パッチ適用などすべてデータベース自身が考え最適化してくれる。

 ストレージ管理を簡素化する新しい機能「Automatic Storage Management(ASM)」がある。ASMは企業内に散在するディスクを1つの巨大なディスクのように仮想化する。管理面でも,ストレージの負荷分散やパフォーマンス管理,バックアップ・リカバリを自動化し,管理者はストレージを監視する必要がなくなる。また,Oracle Database 10gのクラスタリング機能「Oracle Real Application Clusters 10g」で新たに「サービス」という概念を追加した。サービスとはERPやCRMといったプログラムを指し,ブレード上で複数のサービスを稼働できる。また,クラスタ化されたデータベース間で処理能力を変更する新しい機能「ワークロード管理」が搭載される。

 Oracle Application Server 10gでは,アプリケーションの負荷分散を自動化し,月末の給与計算処理などリソースが一時的に増大するとき,自動でサーバーやストレージ,ソフトを処理に割り当てることができる。また,1つのノードで障害が発生した際,瞬時に別のノードに処理を引き継がせるフェールオーバー機能も強化されている。

 Oracle Enterprise Manager 10gでは,Webベースの管理ツールを提供し,あらゆるコンポーネントを一元的に管理する。異常が発生すると,管理者に警告とアドバイスを通知し,ウイザード形式で簡単に問題解決する。Oracle Enterprise Manager 10gはグリッド全体を管理する「Grid Control」や「Database Control」などを提供する。Grid Controlはデータベースやアプリケーション,ストレージ,ネットワーク,OSなどグリッド上のすべての要素を単一のコンソールで管理する。Database Controlは不適切なコードを認識し,適切なコードを通知したり,データベースのチューニングを自動で行ったりする。

小規模システムでも使いやすくなった10g

 Oracleは,小規模なシステムには向かないとよく言われる。今回のOracle Database 10gでは,旧来3時間もかかっていたインストールが20分で終わる。また,CD-ROMが1枚になり,インストール自体も容易になった。Oracle Enterprise Managerは旧来製品の場合,データベースのインストール完了後に,インストールおよび設定を行う必要があったが,初期インストールで,非常に簡単なセットアップもできるようになった。パッケージ・ベンダー向けにはサイレント・インストールも可能にした。

 さらには,「HTML DB」という開発ツールがOracle Database 10gに付属する。この新製品は米Microsoftのデータベース・ソフト「Microsoft Access」のような使いやすさで,Webアプリケーションを作成できる。Excelファイルをドラッグ&ドロップするだけで表が作成され,Excelアドイン機能によりExcelから簡単にOracle Database 10gの表を操作できるようになる。

 他社データベースからOracle 10gへの移行を支援するソフトウエア「Oracle Migration Workbench」を10gでは標準で装備する。さらに,Oracle 10gをゲートウエイとして異種データベースのデータを扱えるようにした「Oracle Transparent Gateway」を別途販売する。また,Oracle8移行のデータベースを簡単にOracle 10gにアップグレードさせるために「Oracle Upgrade Utility」を標準装備した。こうしたツールを用い,既存のソフトウエア資産をOracle 10gに対応させるだけで,エンタープライズ・グリッド環境を実現させていく。

(杉崎 正之=日本オラクル マーケティング本部 システム製品マーケティンググループ シニアマネジャー)