Linuxを使ったことがないけれども,Linuxを試してみたい場合,どうすればよいのか。日経LinuxではLinux自体のインストールはあまり問題にはならず,その後の設定やサーバー環境の構築を主に紹介している。

 しかし,何事も最初に試す際には難しく感じられるものだ。もともと敷居が高いLinuxに気軽に入っていける方法はないだろうか。6月24日発売のムック「Windows PCでLinuxをやさしく使おう」を企画した際に,最初に考えたのは,このことだった。

 学習用途の場合,なかなか専用のLinuxマシンを用意できない。そこで,これまではWindowsとのデュアル・ブート構成を薦めてきた。何の制限もなくLinuxを使えるというメリットはあるが,どうしてもインストール前にパーティション操作が必要になる。試しにLinuxを使うだけなのに,パーティション・ツールを用意し,Windows側のバックアップ作業をこなすというのも敷居が高い。

 そこで注目しておきたいのが,CD-ROM起動のLinuxと,Windowsと同時に使えるエミュレータである。

予想以上に使えるKNOPPIX

写真1(クリックして拡大表示)●KNOPPIXの左上のウインドウでは,Windowsのマイドキュメントを開き,マイピクチャーの一覧を表示した。左下ではゲーム・ソフトのFrozen Bubbleを動かしている。
写真2(クリックして拡大表示)●Windows上でVMwareを起動し,Fedora Core 4を動かしているところ。同時にDebian GNU/Linux 3.1も動いている。
 ふだんLinuxを使っていると,CD-ROM起動のLinuxに対して,どうしても制限事項にばかり目が行ってしまう。パッケージの更新に制限がある,環境の保存がめんどうくさい,起動やプログラムの読み出しに時間がかかる,CD-ROMドライブの音が気になる,などである。

 しかし,Linuxを使い始めたばかりの時点では,メリットがはるかに上回るようだ。Windows環境に一切手を入れなくてよい,パッケージ構成を変更する必要がなく,必要なものがそろっている,起動時に何の入力も必要ない。これらのメリットを考えると,デュアルブートよりもCD-ROM起動のLinux,例えばKNOPPIXを使うのが正解なのだろう。
 KNOPPIXでは,GUI操作だけでアプリケーションを起動できるため,Linuxの勉強にはならないような気もするが,最初に使うLinuxディストリビューションとしてはお勧めできる(もちろん,コマンドも利用できる)。

Windowsと同時に使えるエミュレータ

 CD-ROM起動のLinuxにも欠点がある。デュアル・ブート構成を採った場合と同様,Linuxを使っているときは,Windowsが利用できないことだ。LinuxでできないことはWindowsで処理する,Windowsでは面倒な作業はLinuxで進めるという原則を守ろうとすると,一度に片方しか利用できないのは不便に感じる。

 これを解決するのがエミューレータ・ソフトウエアだ。

 実はKNOPPIXはcoLinuxと呼ばれる仕組みを内蔵しているため,Windows上でKNOPPIXを動作できる。同様に自らcoLinuxをインストールすれば,Fedora CoreやVine LinuxもWindows上で動作する。ただし,coLinuxはマシン自体を仮想化する「PCエミュレータ」ではないため,coLinuxを内蔵しているKNOPPIXは例外として,インストール作業に難が残る。

 快適に作業をするには,米VMware社のVMware Workstation 5なども良いだろう。30日間ではあるが試用もできる。実マシンにインストールするのと同じ手順でLinuxをインストールできるため,coLinuxよりも敷居が低い。

 実際に使用してみたが,coLinux,VMwareとも,2GHz程度のPentium4マシンであればかなり快適に動作する。エミュレーター=低速という判断は誤っていたようだ。冒頭で触れたムックでは,結局,CD-ROM起動,エミュレータ,デュアルブート構成をこの順で紹介することになった。Linuxを触ってみたい,興味のある方は,これらの技術を押さえておくと良いだろう。

(畑 陽一郎=日経Linux)