前回の記者の眼では,jigブラウザなどの携帯フルブラウザ・ソフトを取り上げた。こうした携帯フルブラウザは,携帯電話機にインストールして使うJavaプログラムとして提供されている。今回は,もう一つのタイプの携帯フルブラウザを考えてみる。それは,携帯電話機に最初から組み込まれているタイプだ。

 組み込みタイプのフルブラウザ搭載機の皮切りは,2004年にウィルコム(旧DDIポケット)から発売されたPHS端末のAH-K3001Vで,その後au(KDDI)からW21CA,ボーダフォンからVodafone 702NK,KDDIからW21CAIIが発売された。そして,この夏にかけてNTTドコモがFOMA M1000とN901iSを,auがW31CAとW31Tを発売する。

 このうち,N901iSはACCESSのNetFrontというフルブラウザ・ソフトを搭載している(Vodafone702NKは,NetFrontを後からインストールして使う)。一方,auとウィルコムの携帯電話端末およびFOMA M1000はOperaを搭載している。こうしたフルブラウザは,HTMLの解釈,文字コードの判別,画像処理や描画など,すべてを携帯電話端末内のプロセッサが処理する。

 ACCESSが,「NetFrontのエンジン自体はもともとフルブラウザ機能を備えていた。これまでは端末のハードウエア性能や回線速度を考慮して搭載していなかっただけ」というように,回線が速くなり,高性能なプロセッサ,大容量メモリー,高解像度液晶が安価に搭載できるようになったこれからは,携帯電話機がフルブラウザを搭載するのは当たり前になる。

PC向けページ閲覧だけに使い,別料金が発生する場合も

 ただ,こうしたフルブラウザは従来のブラウザと併用されることが前提になっているようだ。iモードやEZweb向けの携帯専用ページを閲覧するときは,従来のブラウザを使い,PC向けWebページへアクセスするときだけフルブラウザを使うのである。

 携帯電話機の操作メニューを見ると,N901iSの場合はiメニューやブックマークを表示するメニューから「フルブラウザ」を選択してフルブラウザを起動する。W31CAの場合は,カメラや電話帳といったメニューといっしょに「PCサイトビューアー」(フルブラウザのこと)というメニューが表示され,そこからフルブラウザを立ち上げる。

 一番気になる料金体系についても,従来のブラウザとフルブラウザで分かれている。NTTドコモの場合は,パケット定額制の料金プランを契約しているユーザーでも,フルブラウザを使ってPC向けWebページを表示するためにやりとりしたパケットに対しては別に計算され,従量課金が適用される。NTTドコモでは,「ブラウザがやりとりするHTTPヘッダーの情報を途中のゲートウエイが見て,標準ブラウザかフルブラウザかを判別する予定」という。フルブラウザを別扱いにするために,HTTPヘッダーをわざわざ検査するのである。auの場合でも,EZwebとEメールだけなら上限額は4200円(税込4,410円)なのに対して,フルブラウザのパケット代を含めると上限額は5700円(税込5,985円)になる。なお,PHSのAH-K3001Vの場合は,定額で利用できる。

 このように,事業者によっては組み込みタイプのフルブラウザ別料金が必要なことを考えると,前回紹介したようなjig.jpのjigブラウザや,プログラマーズファクトリのscopeなど,端末にダウンロードして使うアプリケーションとしてのフルブラウザにも,まだ利用価値が残る。こうしたソフトは,従来のブラウザの機能を使って通信するので,定額料金メニューに含まれるパケットのやりとりだけでPC向けWebページを表示できるからだ。特に,Scopeは広告を表示することで無料で使える。jigブラウザも1日10ページまで表示可能な無料版が公開されている。

(三輪 芳久=日経NETWORK)

【追記 2005-06-22】
記事中,「料金体系についても,従来のブラウザとフルブラウザで分かれている」としておりますが,PHSであるウィルコムのAH-K3001Vでは定額で利用できます。この内容を,最後の1~2段落に追記させていただきました。