NTT東西地域会社のFTTH(Fiber To The Home)サービス「Bフレッツ」の加入者獲得ペースが上昇している。2005年3月には,月次ベースの新規加入者数が両社合計で9万3000件となり,単月純増数における過去最高の実績を記録した。

 「毎年,年度末にあたる3月は加入者数が伸びる傾向にある。だが4月に入っても3月のペースがダウンする様子はない」と,NTT東日本の古賀哲夫・常務取締役コンシューマ事業推進本部長は今後の推移にも自信を見せる。

 NTT東西は2005年度に,合計で180万件(NTT東日本が100万件,NTT西日本が80万件)のBフレッツ・ユーザーを新規に獲得するという目標を掲げている。古賀常務は3月の獲得件数の手応えから,「今年こそ目標達成を現実のものにする」と意気込む。NTT東西は過去,2003年度,2004年度にもそれぞれ100万件,120万件という獲得目標を掲げたが,達成できなかった。それだけに今回の目標実現にかける思いは強い。

ADSLからの乗り換えを促す

 目標を実現するためには,過去最高だった3月の加入者数を上回るペースでユーザーを獲得していく必要がある。こうした高い目標設定の背景にあるのは,今後ADSL(非対称デジタル加入者線)サービスからFTTHサービスへの乗り換えが本格化するという見通しである。

 既に2004年後半から,単月の純増数ではBフレッツがフレッツADSLを上回る傾向が続いている。NTT東日本は,2005年度前半にはフレッツADSLが単月ベースで純減に転ずる可能性もあるという。こうした動向を踏まえてNTT東西は,400万件以上のフレッツADSLユーザーをターゲットにした,Bフレッツへの乗り換えキャンペーンを展開する考えのようだ。

 今夏に向けては,Bフレッツで加入受け付けから回線工事までにかかる期間の短縮や,提供エリアの拡大なども進めるという。提供エリアは,2005年3月末時点で72%程度となっている人口カバー率を85%まで上げる計画だ。

 また,FTTHサービスの課題であった加入手続きにかかる手間を削減する。例えば,家電量販店など窓口で加入申し込みを受け付ければ,その場で回線工事を実施できる日程などが分かるような仕組みを導入するという。このような営業支援システムの強化で,加入希望者を取りこぼさない体制を整える計画である。

中期経営計画が実現できるかを占う試金石

 NTT(持ち株会社)は2004年11月に公表したNTTグループ中期経営戦略の中で,「2010年時点でFTTH加入者数3000万回線」という目標を掲げた。この中期経営計画の目標が実現するかどうかも,今後のNTT東西の営業努力にかかってくる。

 古賀常務は,「6年後に3000万回線を達成するには,NTT東西が今後毎年,目標獲得数を50万件(1社あたり)ずつ上乗せして,それを達成すればよい」という。今年の目標である180万件の増加を達成できれば,6年後の3000万回線実現への道も開けてくるとみている。こうした観点からも,NTT東西のBフレッツ加入者獲得件数が,目標である180万件を達成できるペースで推移するかどうかに注目が集まる。

(滝沢 泰盛=日経ニューメディア)