一方,「明日までに,分かりやすく書き直してください」は,自分を主語にして配慮の一言を加えると,「お忙しいとは思いますが,明日までに分かりやすく書き直していただけると(私は)助かります」となる。

 3つ目のポイントは,ネガティブな表現を,ポジティブな表現に変えることだ。例えば「この提案書は専門用語が多く,顧客にとって難しい内容になっています」は,「専門用語を使わないようにすれば,顧客にとってもっと分かりやすい提案書になると思います」とする。伝える内容は本質的に同じだが,ポジティブな表現にすることで,一方的にダメ出しをされているように読み手が感じることを避けられる。読み手の視点に立てば,文字通りポジティブな気持ちで,書き手の指摘を受け入れやすくなるだろう。

メールのスキルを日々研鑽する

 このほかにもポイントはいくつもあり,ここでは書ききれない。日経ITプロフェッショナルの読者の方は,2005年3月号(3月1日発行)の特集「速効メール術」をぜひご覧いただきたい。特集ではこのほか,冒頭で紹介したライブドアの堀江社長のメール仕事術に加えて,エコノミストの森永卓郎氏が語るリーダーに求められるメールのスキル,読み手にとって処理しやすく正確に内容が伝わるメールの書き方,英文メールの基本的な作法や書き方などをまとめた。

 「メールの書き方など今さら」と思う人がいるかもしれないが,記者自身,特集記事を担当したことで,メールが相手の感情を害しやすいことをはじめとして気づかされた点が多かった。日ごろ自分が書いているメールに関して,反省しきりである。

 メールを書くスキルはコミュニケーション・スキルの中核であり,決して「簡潔に用件を書けばよい」で済む単純なものではない。 実際にライブドアでは,「優秀な社員でも転職してきたばかりのときにはメールのスキルが足りずに,メールでのケンカなどのトラブルを起こす人がいる」(堀江社長)という。ただし「日々メールたくさんのメールを書いて,上司などから注意を受けるうち,スキルアップしていく」(同)。何よりも重要なのは,奥深いスキルだと認識し,努めて日々研鑽していくことである。

(中山 秀夫=日経ITプロフェッショナル)